岩手初の新型変圧器導入、安定強化へ住田変電所整備/東北電力

▲ 向川口地内で運転が始まった住田変電所=世田米

菜種油の活用も

 

 東北電力岩手支店(九萬原敏巳執行役員支店長)は、住田町世田米向川口地内で新設整備を進めてきた住田変電所の運転を始めた。支店管内では初となる「新型配電用変圧器」を導入。環境負荷低減などを見据え、絶縁油として植物由来の菜種油を使った変圧器導入を進めてきた中、新型はさらに効率性を向上させた。新変電所完成により、町内電力供給の安定性が増す。
 町内の一般家庭に対する電力供給はこれまで、住田高校に近い世田米大渡地内にあり、大正13年から営業運転を開始している世田米発電所(出力860㌔㍗)内の変電設備が担ってきた。さらなる電力の安定供給を見据え、国道340号沿いで6月末から新設工事を進め、8日から運転を始めた。
 変電所内では、岩手支店管内では初となる「新型配電用変圧器」を配備。変電所の運転開始に合わせて稼働している。変圧器は発電所から工場、一般家庭まで電気を流すために電圧を変更させる設備で、主に6万6000ボルトから6600ボルトに変圧する。
 東北電力は平成21年、二酸化炭素排出削減など環境負荷低減を目的に、北芝電機㈱=本社・盛岡市=と共同で絶縁油に菜種油を採用した「環境調和型変圧器」を開発。絶縁油は、変圧器内部にある巻線間や鉄芯などとの間で電流を遮断するために用いる。
 従来変圧器は原油を精製した鉱油を用いていた。菜種油は植物由来であり、生育時に大気から吸収した二酸化炭素と相殺される「カーボンニュートラル効果」が得られる。
 さらに吸水力にすぐれ、巻線の絶縁紙に含まれる水分量が少なくなることから、劣化スピードを遅らせる効能もある。新型開発に向けては、冷却性能のさらなる向上や菜種油の特性を細部に渡って解析するなどしながら設計を進めた。
 環境調和型との比較では、新型は15%の電力損失低減。定格連続運転下での期待寿命も30年から60年に延伸させた。
 変圧器の構造そのものも見直し、工場内ですべて組み立てた状態での搬送が可能となり、設置期間短縮にもつながった。本年度以降、管内(東北6県、新潟県)では年間あたり25台程度導入する。
 世田米発電所内の変電設備は平成4年に設置され、絶縁油にはこれまで鉱油を使用。東北電力によると、気仙3市町の中でも菜種油を活用した変電設備が設けられるのは初となる。
 住田変電所変電所の容量は2万㌔ボルトアンペアで、世田米の1万5000同を上回る。世田米は1基だったが2基体制とすることで、安定性も増した。
 最大6600世帯への供給が可能。現在は町内約3600世帯に対し、世田米と住田両施設から電力を供給している。世田米の変電設備機能は本年度中に廃止となるが、水車発電は継続する。
 岩手支店電力ネットワーク本部の平野伸一郎本部長は「住田町内への電力供給の安定性向上や、新型配電用変圧器導入によって環境負荷低減に寄与でき、意義深いものと考えている。地域に寄り添う地元の電力会社として、引き続き電力の安定供給を通じて地域の復興・発展を支えていきたい」としている。