大船渡港コンテナ上屋、規模縮小し整備へ/大船渡市議会全協で概要説明

▲ 施設規模を変更した大船渡港共同利用コンテナ用上屋の完成予想図

 大船渡市は19日に開かれた市議会全員協議会で、大船渡町字野々田地内に整備を計画する大船渡港共同利用コンテナ用上屋について、施設規模を縮小する考えを明らかにした。当初は平成27年12月の完成予定だったが、同年7月の建設工事入札が不落に。現状では追加となる財源の確保が困難で早期の完成が見込めないことから、ストックヤード面積を縮小するといった施設規模を変更し、事業を進めるとした。変更後の再入札や契約事務は今月下旬から10月にかけて予定しており、11月の着工、本年度内の完成を目指す。

 

28年度内の完成目指す
追加財源確保の困難受け

 

 東日本大震災を受け、国際コンテナ定期航路の休止を余儀なくされていた大船渡港。25年9月、京浜港とを結ぶ国際フィーダーコンテナ定期航路として再開した。27年度のコンテナ貨物取扱量(実際に荷物が入った実入りのみ、1TEUは20フィートコンテナ1個)は、1636TEU(輸入806TEU、輸出830TEU)。主な品目は輸入が建築部材や牧草など、輸出が紙類、プラスチック類、冷凍魚などとなっている。
 市はコンテナ貨物の確保に向け、関係機関とともに積極的なポートセールスを展開。一方で、荷主企業などからは貨物保管能力の不足により、一時保管や荷さばきのための上屋が必要との要望が寄せられていた。
 こうした中、市はコンテナ用上屋の整備に向けて日本財団と助成契約を締結し、建設予定地の検討や野々田ふ頭の災害復旧工事との調整、SOLAS計画(※)の変更などを実施。野々田ふ頭南側の敷地(面積4438平方㍍)に鉄骨造2階建の施設(建築面積2659平方㍍)を整備するとした。事業費は約3億6000万円で、全額日本財団の支援金となる。
 しかし、27年7月に建設工事入札を行った結果、震災後の資材価格の高騰などが影響し、見積もった資材等の単価が、市が設計に用いたものと業者側とでは差が大きく、予定価格を上回る応札で不落となった。これを受け、市は日本財団に追加助成を申し入れるとともに、港湾管理者である県と整備に関する国庫補助金の活用や県費の投入について協議を重ねてきた。
 財団側からは6月、熊本地震に対する支援などの関連によって追加助成は不可との回答を受けた。県からも補助制度等の導入は検討しつつも、29年度以降の予算対応となり、その確保も不透明であるとの考えが示された。
 このように財源確保が困難であり、当初設計による整備では早期の完成時期が見込めないため、市は港湾物流関係者らと協議を重ねた。その結果、荷主企業などから上屋整備への要望が高まっている状況下において、完成時期の遅れは港湾の利活用に影響する懸念もあることから、施設規模を変更して事業を進めることとなった。
 変更後の上屋は鉄骨造平屋建で、建築面積は2062平方㍍。面積はストックヤードが1095平方㍍と変更前の1500平方㍍から400平方㍍余り縮小した。屋外荷さばき場は598平方㍍、事務室は124平方㍍。
 コンテナ貨物の一時保管施設とし、コンテナへの詰め込みや取り出し、通関などの荷さばき作業に使用するもので、ストックヤードには小型トラックの直接乗り入れが可能。配送センターとしても使用できる。
 屋根には太陽光発電設備を設置し、蓄電池による夜間の電力補完や災害時の非常用電源として活用。事業費は変更前と同額となる。
 今後は9月にかけて計画変更申請手続きを行い、10月中までに再入札と契約事務を計画。11月に工事着手後、来年3月の完成を目指す。市は上屋の整備により、最低でも年間100TEUの取扱量増を見込んでいる。
 議員らは、財源確保が困難となった理由や県との協議経過などを質問。上屋の機能充実なども要望した。
 戸田公明市長は「今回は、あえて小さく産んで大きく育てようと示した。こういった形の提案になるが、まずはできるだけ早く使いだそうと。その結果、どうしてもストックヤードが足りないということになれば議会に相談し、財政的な状況も勘案したうえで最善の策を考えていきたい」と述べ、上屋の規模変更に理解を求めた。
 ※SOLAS計画=国際航海に従事する総トン数500㌧以上の貨物船等が使用する港湾施設について、立ち入り制限区画の設定や出入りの確認などを定めるもの