気仙の夏決算 、各地で多彩なイベント

▲ 大船渡市魚市場を会場に、道中踊りなどが展開された三陸・大船渡夏まつり=大船渡町

伝統守り、住民を元気に
協力、支援の手絶えず いわて国体競技も幕開け

 

 東日本大震災から、6度目の夏を迎えた気仙地方。被災地では復旧・復興事業の兼ね合いなどで開催場所の変更を余儀なくされながらも、地域の伝統を守り、住民らに元気を与えたいと各種イベントが催され、「希望郷いわて国体」の競技も幕開けした。各種催しの開催には、今年も国内外からの協力、支援の手が絶えず、多くの観光客でにぎわい、感謝の意と復興への歩みを広く発信した。また、亡き人たちへ鎮魂の祈りをささげる花火大会、お盆行事も行われた。気仙のこの夏を振り返る。

 

夏まつり盛況
海と親しむ場も
大船渡市

 

 大船渡市では、「三陸・大船渡夏まつり」をはじめとする夏の恒例イベントが各地で展開。震災後、久々に子どもたちが海と親しむ場も設けられた。気仙のトップを切って「希望郷いわて国体」のマラソン競技も開かれ、市内外から多くの人々が足を運んだ。
 恒例の三陸・大船渡夏まつりは今年、復旧・復興工事との兼ね合いや緊急時の避難路確保などの面から、南側の大船渡市魚市場で開催。海上七夕の大船渡湾内巡航や市内外の25団体、約1100人による道中踊り、復興グルメフェスティバル、花火大会などが繰り広げられ、主催の実行委によると主会場には約6万人の人出があったという。
 このほか、盛町の「灯ろう七夕まつり」、三陸町では越喜来の「オキライサマー」「三陸港まつり」、綾里の「綾里夏祭り」などを展開。県内外からの協力を受け、交流を深め合いながらの開催となった。三陸港まつりは「三陸国際芸術祭2016」にも位置付けられ、国内外の芸能披露を通じて鎮魂への祈りもささげた。
 越喜来では、7月18日に市立博物館が舟作海岸で「海辺の生物観察会」を、24日には大船渡青年会議所が浪板海岸で一日限りの「うみびらき」を実施。震災後、久々に子どもたちが海と親しむ機会となり、歓声を響かせた。
 今月7日には、盛町内でいわて国体のマラソン競技が開催。市内外の世代を超えた1000人のランナーが、完走や好記録を目指して力走。沿道では市民らが声援を送った。
 末崎町の三陸復興国立公園内にある碁石海岸キャンプ場は7月16日、今年の利用受け入れを開始。碁石海岸インフォメーションセンターによると、開設から今月21日までの利用者数は延べ731人。リニューアルから3年目を迎え、年々利用者数は増加傾向にあるという。

 

臨時観光窓口
開設しPRも
 陸前高田市

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「うごく七夕」。山車11台の集結は見られなかったが、四つの祭組がかさ上げ前の道路でおはやしを披露した=高田町

 陸前高田市では毎年8月7日開催の「うごく七夕」が高田地区で、「けんか七夕」が今泉地区でそれぞれ行われた。かさ上げ工事により運行場所が限られ、うごく七夕の山車11台が1カ所に集合することはなく、けんか七夕は実施会場を変更しての開催となった。
 しかし今年は7日が日曜だったこともあり、日中は特に多数の人出に恵まれた。企業、団体、学生などが研修の一環として山車を引く姿も恒例の光景となった。
 気仙川花火大会は昨年まで震災犠牲者の月命日にあたる11日に開催されていたが、今年から14日に変更。同市観光物産協会によると「お盆の帰省客らが見物しやすくなったこともあり、例年以上に人が出たようだ」という。15日には矢作町の「下矢作灯篭七夕」、気仙町の「気仙川川開き」と、各地で盆行事も繰り広げられた。
 気仙町の「一本松茶屋」には、12〜16日まで市などが臨時観光案内窓口を開設。およそ200人から回答を得たアンケートによると、関東や名古屋市からの来訪者が多数を占めていた。
 窓口では㈳マルゴト陸前高田による「復興最前線ツアー」受け付けも。各回の定員を10人ほどとしていたが、ほぼ毎回定員に達し、関心の高さをうかがわせた。また、ご当地グルメ「陸前高田ホタテとワカメの炙りしゃぶしゃぶ御膳」も同窓口でPR。キャンペーンを行ったこともあり、12〜21日までに376食を売り上げた。
 今月28日にはいわて国体のビーチバレー競技が高田町で実施される。これに先立ち7月31日と8月19日には直前事業大会も。県内外からの参加者でにぎわい、本番へ向け機運を盛り上げた。

猛暑が好影響
滝観洞に活気
   住田町

 

 7月30日に世田米商店街などで繰り広げられた「住田町夏まつり」は、今年が開催50年の節目。天候に恵まれ夏らしい暑さが広がる中、よさこい演舞をはじめ多彩なアトラクションを楽しもうと、前年を上回る約3100人が訪れた。

 好天続きで多くの来訪者でにぎわった滝観洞=上有住


好天続きで多くの来訪者でにぎわった滝観洞=上有住

 上有住の滝観洞は洞内が年間を通じて10度前後で安定し、とくに夏場は独特の「ヒンヤリ」を楽しむ行楽客でにぎわいに包まれる。滝観洞観光センターの運営などを担う町の第3セクター・住田観光開発㈱(松田栄社長)によると、「滝観洞まつり」が開かれた8月7日から、入込数が好調に推移した。
 同日は332人が洞内に入り〝冒険〟。12〜16日も300人を超える来訪が続き、とくに14日は468人に達した。同センターでは「雨続きの前年とは打って変わり、猛暑続きで涼を求める観光客でにぎわった」と振り返る。
 一方、道の駅・種山ヶ原ぽらんは、7〜16日の入込総数は8718人でほぼ前年並み。最も多かったのは14日の1497人だった。前年との違いについて、同社では「お盆後半の入り込み数に『山』がなかった」とみる。
 要因には今年から『山の日』の11日が祝日となったことや、曜日の配列を挙げる。猛暑続きの影響で盆用の盛花は出荷時期が例年よりも早まり、とくに15、16日は欠品状態になったという。
 種山では「ケセンロックフェスティバル」が7月16、17の両日行われ、2日間で約5000人を動員。地元住民が中心となった実行委が献身的に運営を支え、県内外の音楽ファンを迎え入れた。対照的に町教委が主催した23日の「森の達人講座・星座編」では、静けさが広がる中で約40人が天体の輝きをじっくり楽しんだ。

夏らしい暑さ
盆明けは台風も
気象

 

 気仙地方を含む東北北部は7月29日ごろに梅雨明けしたとみられ、平年よりも1日遅く、昨年と同じ。梅雨明け後は8月上旬ごろまで晴れの日が続き、各地で気温も上昇して夏らしい暑さとなった。
 一方、8月中旬には台風7号が東北の太平洋沿岸を北上。気仙にも大雨や暴風などによる被害が生じ、住民生活に影響を及ぼした。
 同16日から18日にかけては、三陸沖に接近した台風7号の影響でまとまった雨が降った。3日間の大船渡の降水量合計は167・0㍉で、7月下旬から8月中旬までの平年値合計(155・9㍉)を上回った。
 日降水量が最も多かったのは17日で、住田では8月の観測史上最も多い149・5㍉を記録。陸前高田でも、同月として震災後最も多い88・0㍉となった。
 同日は、大船渡で最大瞬間風速21・9㍍、住田で同22・2㍍の非常に強い風も観測した。