運用5カ月、登録5800人/医療介護連携「未来かなえネット」

▲ さらなる登録者増に向け、各地で行われている出前授業=住田町

 気仙地区内の医療機関などでつくる一般社団法人・未来かなえ機構(代表理事・滝田有気仙医師会長)が4月から本格運用を始めた地域医療・介護連携ICT(情報通信技術)システム「未来かなえネット」。情報共有の推進によって限られた医療・福祉資源の有効活用を図る取り組みで、参加数が5800人を超えるなど着実に広がりを見せる。年度内に1万人の参加を目指す中、今後も高齢者教室などを生かした出前授業を積極的に行い、理解拡大を図る。

 

住民参加 着実に広がり

各地で出前授業も

 

 同機構は、平成23年12月に国から選定された気仙広域環境未来都市構想に基づき、医療・介護・福祉の連携モデル構築を目指してきた2市1町の医療や介護、行政関係者らで昨年4月に設立。現在、事務所は住田町世田米の町保健福祉センター内に構える。
 未来かなえネットにより、気仙の各病院、医科・歯科診療所、介護事業所、調剤薬局などで、患者の各種医療情報を共有。業務効率化や、患者らのサービス向上を見据える。
 4年余りの検討を経て情報通信サービス大手の日本ユニシス㈱(本社・東京)にシステム構築を委託。登録者がいつ、どこで診療・福祉サービスを受けたか、どのような薬を処方したかなどの情報を一元的に集約・管理し、ネットワーク参加機関相互で参照できる。
 住民側にとっては▽別の診療所などでの治療や薬の状況を説明する面倒が少なくなる▽施設を移るたびに同じ検査を繰り返したり、同じ薬を重複することが少なくなる▽災害時に情報を残すことができ、治療・介護が継続しやすい──といったメリットがある。
 運用開始に先立ち、昨年12月から住民参加を受け付けた。先月末時点での登録者数は5472人。内訳は大船渡市2211人、陸前高田市2144人、住田町1053人、町外64人となっている。
 今月26日時点では5845人。気仙の人口は現在約6万3000人で、9月中には参加率が10%を超えるめどがついた。参加機関・施設数は4月時点では23からスタートしたが、年内には60を超える見込み。気仙にある医療、福祉関連施設数は100程度という。
 住民参加が増えるほどシステムの効果が発揮される形となっており、同機構では年度内の1万人突破を目標に掲げる。さらなる理解や普及の輪を広げようと、公民館や各種集会に出向いての説明は本年度に入り40回を超えた。
 ロボットを使った説明も企画するなど、関心喚起にも力を入れる。このほか、医療・介護にかかわる勉強会の企画・運営や軽スポーツ器具の貸し出しも行っている。
 25日には、住田町役場で開かれた世田米地区の高齢者教室で、同機構の安部博事務局長が講演。29年度以降は遠野や釜石地区の各医療施設、岩手医大、東北大学とのネットワーク形成も進める方向性にもふれ、充実した医療・介護の構築に向けて協力を求めた。
 安部事務局長は「医師や看護師らの無駄な仕事を大幅に削減し、治療やケアの時間にあてることができる。気仙は東日本大震災前から医療資源が不足しているとされてきた。皆さんの参加によって、医療や介護職を支えられる」と強調。翌26日には、教室に参加した住民が事務所を直接訪れ、申込書を提出する姿が見られた。
 7月から8月にかけ、申込書を気仙3市町の全世帯に配布。参加している県立病院や診療所、行政窓口にもある。返信用専用封筒(郵送無料)などを使って提出すると、後日登録確認書が届く。参加料は無料。加入・脱退はいつでも自由にでき、家族での同時登録も可能となっている。
 「どんなに小グループでの集まりでもいいので、直接出向いていきたい」と安部事務局長。今後も各市町の行政機関とも連携しながら広報活動を展開する。問い合わせは、同機構(℡22・7261、土日・祝日除く)へ。