被害の全容まだ見えず、台風10号 漁業に打撃/気仙両市(別写真あり)

▲ 脇の沢漁港にも大量の流木などがみられ、重機を使っての撤去などに追われた=陸前高田市米崎町
▲ 2日ぶりに水揚げが行われ、活気づいた魚市場=大船渡市

 台風10号に襲われた気仙両市では、基幹産業の漁業にも大きな影響が出ている。各漁港では流木やごみが大量に流れ込んだために出船できず、撤去作業に追われる地元の漁業者らの中には、今回を含めて8月中に3度、台風による打撃を受け「またか…」とため息を漏らす人も。各漁協には養殖施設や定置網などに木が引っかかっていたり、漁船が転覆・流失するといった報告があるが、被害の全容はいまだ明らかとなっておらず、通常の業務再開にはしばらく時間を要しそうだ。

 

養殖施設や漁船損傷、各漁港に流木・ごみ漂着

 

 気仙両市の各漁協によると、大船渡市内では綾里地区で小型船5隻が流失・大破。陸前高田市内では米崎町、広田町内で計4隻が転覆・損傷した。
 養殖施設は現時点で水没するといった被害はみられないが、ロープが切れるなどして1カ所に密集したり、多くの流木が引っかかるといった報告がある。各漁協がカキ、ホタテの落下をはじめ全容把握を急いでいる。
 各地の漁港には大量に流木やごみが押し寄せ、31日から漁業者らによる清掃作業が行われている。
 このうち、陸前高田市米崎町の脇の沢漁港でも1日、カキ養殖漁業者ら約20人が集まり、午前8時ごろから実施。
 海上には一面に流木などが広がり、重機を使って取り除く地道な作業が続いた。
 8月に台風7号、9号が太平洋沿岸を北上したときにも、漁業者らは漂流物の撤去に追われ、今回で1カ月の間に3回目の対応となった。新沼智文さん(50)は「『もううんざり』というのが本音だが、片づけないと船も出せない。養殖棚に大きな被害がなさそうなのでそれだけが救い」と語った。
 本来であればカキ養殖は10月からの築地市場への出荷に向け、貝殻の付着物を取り除く温湯処理などで一番忙しい時期。大和田晴男さん(63)は「開き直るしかない。本格的な出荷時期は11月ごろにずれ込むのでは」と先を見据えた。
 大船渡市漁協企画営漁指導課兼事業管理課の新沼勇悦課長(57)は「いくつかのカキやホタテは落ちてしまったと思う。大きな痛手になっていなければいいが」と気をもみ、「ワカメやホタテなどの種苗をつくっている施設に被害があれば、来年や再来年の事業に響いてくる。そちらの状況もどうなっているか心配」と話していた。
 一方、大船渡市魚市場では1日、2日ぶりに水揚げが行われ、地元の大型サンマ漁船が漁獲したサンマ39㌧などが水揚げされた。定置網漁業はしけの影響などで被害確認が進んでおらず、水揚げが本格再開する時期はまだ見えない。