29年度から本格化へ、世田米火石を皮切りに/気仙川改修

▲ 29年度から改修整備が本格化する岩澤橋~瀬音橋間=世田米
▲ 河床掘削や護岸整備の見通しが示された説明会=同

 県大船渡土木センター住田整備事務所による世田米火石地区(岩澤橋~瀬音橋間)での気仙川改修に関する住民説明会は31日夜、同事務所で開かれた。約1㍍の深さで河床掘削を行うほか、国道340号が通る火石側では、護岸の傾斜角度を高めることで流路を確保し、洪水を防ぐ計画。整備は平成29年度から本格化し、30年度の完了を目指す。30年に一度発生する規模の大雨、洪水に対する治水対策を進める中、普段川水が流れる部分での面的な河床掘削は同区間から始まる形となる。台風の影響で河川水位が危険域に達する状況が相次ぐ中、説明会では防災充実に向けた意見交換も行われた。

 

 治水対策高まる関心

 

 説明会には、今後の用地取得や測量など対象工区にかかわる地権者5人が出席。同事務所からは岩澤橋~瀬音橋間の設計計画や今後の用地測量の実施、気仙川の水位情報などについて示された。
 説明によると、岩澤橋側寄りの国道340号が走る火石側では、コンクリートブロックで護岸をつくり直す計画。これまでよりも急勾配とし、河川自体の幅は広げずに流路を確保する。
 護岸沿いには幅4㍍の管理者用道路も設置。普段の巡視や緊急時における消防関係車両の通行が想定されるという。
 底部を削ることで、より多くの洪水を流す河床掘削にも着手。両橋間約500㍍の全区間で面的に整備を行い、幅は30~40㍍。堆積している土砂を約1㍍の高さで掘ることにしている。
 出席住民から計画そのものに異論は寄せられなかったが、傾斜がきつくなる護岸部分にガードレールやフェンスなどの設置を求める意見や、上流部に位置する中沢川との合流部分での対策強化を要望する声も。また、30日に気仙を直撃した台風10号の影響による急激な水位上昇にふれ、治水対策の見通しに関する発言も寄せられた。
 上流部に位置する昭和橋や大股川・高屋敷での水位は、いずれも氾濫危険水位を超過した状態が続き、町は火石・川向地域に避難指示を発令。出席男性の一人は「数十㌢であふれる状態。あと1時間降雨が続いていたらどうなっていたか」と振り返る。一方で意見交換ではハード整備だけでは限界があるとし、行政情報などに基づく早期避難の重要性も話題に上った。
 県は26年7月、気仙川、大股川の洪水対策として計画していた津付ダム事業の中止を決定。東日本大震災で被災した下流域の復旧復興に向けた新たなまちづくりの動きをふまえ、河川改修を中心とした新たな治水対策を進めている。
 計画では、35年度末までに治水安全度30分の1(30年に一度発生する規模の大雨、洪水に対する安全)を確保し、その後は将来目標である安全度70分の1の整備を段階的に行う。整備は、気仙川7工区(高田、竹駒、横田、田畑~田谷、火石~川向、川向、清水沢~向川口)と大股川1工区に分けて取り組む。
 これまで、大股川では住民からの要望を受けて部分的に河道掘削を実施。本年度は、昨年完成した特別養護老人ホーム・すみた荘付近で、川岸に近い部分の土砂を取り除きながら護岸工事が進む。
 気仙川、大股川流域での面的な河床掘削は、すでに説明会を終えた住田フーズから岩瀬橋間までを含む約1㌔の範囲内から始まる計画。住田フーズ付近では、切土や護岸工事も展開される。流域には多くの住宅や事業所が構えている中、今後は整備の進展とともに住民らによる治水対策への関心の高まりも予想される。
 整備事務所の北村安所長は「用地取得をお願いする住民の皆さんや、漁協からは協力的な対応をいただいている。台風や東日本大震災など、自然災害に対する意識の高さが整備への期待につながっていると感じている」と語り、今後の改修事業推進に力を込める。