「絶滅と進化」をたどる、科博の巡回ミュージアム/大船渡市(別写真あり)
平成28年9月17日付 7面

国立科学博物館・巡回ミュージアムin岩手「進化の影と光─古生代の大量絶滅と回復─」は16日、大船渡市末崎町の市立博物館(小松伸也館長)で開幕した。国立科学博物館(科博)と岩手県立博物館(県博)が所蔵する古生物資料を展示し、生物の絶滅と進化をたどる企画。30年以上前に採集され、気仙両市の市立博物館に贈られた化石を〝再会〟させた大船渡会場独自の展示もあり、多くの来館を呼びかけている。
30年ぶり化石の再会も
巡回展は、文部科学省委託事業「博物館ネットワークによる未来へのレガシー継承・発信事業」の一環として、科博と県内の博物館などが協働で実施。県博、岩泉町、大船渡市、久慈市の4会場で来年2月まで順次展開する。
絶滅は、生物が子孫を残さずに絶えてしまうこと。岩手では、約2億5000万年前の古生代に起きた生命史上最大の大量絶滅を記録する、世界的にも重要な地層が見つかっており、各地に古生代中期以降のあらゆる地質時代の地層が分布。さまざまな化石も産出されている。
同展では4章に分け、約5億4100万年~2億5200万年前の古生代に起きた3度の大量絶滅と岩手のかかわりを紹介。特に当時の9割以上の生物が絶滅したという古生代末(ペルム紀)の大量絶滅を中心に解説し、現代で絶滅が危険視される生物たちにも言及。彼らを守るため、何ができるかを考える機会にも位置付けている。

大船渡㊨と陸前高田の各博物館に贈られた四放サンゴの化石が〝再会〟
会場には、三葉虫やアンモナイト、「甲冑魚」と呼ばれる魚類、恐竜など、自然環境の大きな変化を受けて絶滅した生物たちの化石、骨格標本、はく製など約90点を展示。中でも、全長約5㍍、高さ約1㍍50㌢という白亜紀後期の草食恐竜・ヒパクロサウルス(子ども)の全身骨格標本が目を引く。
第2章「古生代の3大絶滅」では、大船渡、陸前高田両市立博物館が所蔵する二つの化石を展示。この化石は古生代末には絶滅した四放サンゴの仲間で、もとは一つの石が二つに割れたもの。昭和57年に日頃市町の故・村上二三氏が採集し、両館へ寄贈した。
大船渡では常設展示されているが、陸前高田では東日本大震災の津波被害を受け、洗浄・殺菌などの安定化処理が施された。二つの化石が各博物館に贈られてからは、初の〝再会〟になるという。
第4章「今そこにある大量絶滅の危機」では、自然界本来のスピードに比べ、100倍以上の速さで生物が絶滅している現実も紹介。人間の活動が大きくかかわっているほか、震災の津波で絶滅寸前に追い込まれている生物もいるとして、警鐘を鳴らしている。
会場にはこのほか、触れられる大きなアンモナイトの化石もお目見え。小松館長は「ヒパクロサウルスの骨格標本など、各章で有名な資料を展示している。期間中は関連行事も計画しているので、子どもから大人まで多くの方々にいらしていただきたい」と話している。
関連事業として「シールラリー」も実施しており、巡回ミュージアム会場をはじめ、青森、岩手、宮城の三陸ジオパーク主要拠点施設9カ所で配布する古生物の生き物シール3枚を集めると、景品と交換できる。
巡回展は12月4日(日)までで、休館日は10月31日(月)以降の毎週月曜日と祝日。問い合わせは市立博物館(℡29・2161)へ。