ふるさとの〝物語〟伝える 民話読み聞かせの一人舞台、浅野温子さん「よみ語り」 /陸前高田(動画、別写真あり)

▲ さまざまな人物を巧みに演じ分け、観客を舞台へと引き込んだ浅野さん=広田町

 女優・浅野温子さんによる「よみ語り ふるさと発見伝」は27日、陸前高田市広田町の黒崎神社を会場に行われた。浅野さんは広田の伝承民話がモチーフとなった物語を〝一人語り舞台〟として完成させ、地域の人に「皆さんの暮らす土地を愛してもらいたい」と呼びかけた。

 公益財団法人イオンワンパーセントクラブが主催する東北復興支援事業の一つ。その地域の由緒ある民話を伝え古里の良さを再認識してもらおうと、平成24年から実施している企画で、本県では初開催となる。陸前高田市が後援した。
 國學院大学の客員教授も務める浅野さんは、10年以上前から古事記や日本書紀といった日本の古い物語をひもとき、全国の寺社・旧跡などでの「よみ語り」公演を展開している。この日は高田東中、広田小の児童生徒合わせて約260人と、一般の観客100人以上が詰め掛けた。
 題材に選ばれたのは、広田に伝わる民話「龍神の神楽」にオリジナル解釈を加えた物語。黒崎仙峡の崖下にある「雌沼雄沼」という大きな岩穴から聞こえる、神楽のような不思議な音色の正体を見極めるため、15歳の若き漁師2人が小舟で向かう──というストーリー。ライバル同士で仲の悪い2人が、困難に直面する中で助け合うようになり、さらなる苦難にも立ち向かっていく。
 浅野さんはすべての登場人物を身一つで表現。少年から老人、女神に至るまで、声音と表情、動きを使って見事に演じ分けた。ステージを縦横無尽に動き回る浅野さんは、張りのある声と豊かな表現力で観客をくぎづけにし、物語の世界へと引き込んだ。
 1時間近くにわたる舞台を終え大きな拍手を浴びた浅野さんは、「皆さんの村を、海を、守ろうとした人たちがいたという物語で、きっと本当にあった出来事だと思う。自分たちの土地を愛し、守っていこうという思いを大事にしてほしい。私ももっとたくさん岩手の話を掘り起こし、また皆さんに聞いていただきたい」と語りかけた。
 また、児童生徒を代表し高田東中3年の千葉彩乃さん(14)からは、浅野さんに感謝の記念品が贈られた。
 物語の地元・広田在住で同校3年の村上有優実さん(15)は「役によって話し方や表現が違っていてすごい」といい、「私たちが知らなかった地域の歴史を知ることができた。犬猿の仲だった2人が、力を合わせ、相手を思いやるようになっていくところが、広田の人たちの温かさそのままだと思った」と、古い物語を身近に感じた様子だった。