日本柔道の発展に尽力、金野さん(日大監督)が強化委員長に/陸前高田ふるさと大使
平成28年10月5日付 6面

東京五輪へ向け活躍に期待
父親が陸前高田市米崎町出身で、同市のふるさと大使も務める金野潤さん(49)=日本大学柔道部監督=がこのほど、全日本柔道連盟の強化委員長に就任した。4年後の東京オリンピックへ向けた選手育成に携わることになり、〝発祥の地〟での大会開催によって真価が問われる「日本柔道」発展のため力を尽くす。
金野さんは東京都生まれ。現役時代は95㌔超級、無差別級で活躍し、男子柔道界の最高峰・全日本選手権は平成6、9年の2度制した。
バルセロナ五輪メダリストの小川直也選手にとって最大のライバルであり、2人が重量クラスの一時代を築いたといっても過言ではない。
一方で金野さん自身はアジア選手権以外に世界での〝舞台経験〟がない。歴代の強化委員長は国際大会の入賞経験者が務めるのが常であり、今回の就任は異例の大抜擢といえる。しかし引退後にはアメリカでコーチングを学び、監督を務める母校・日大の教え子には、リオ五輪100㌔級で見事な戦いを見せた銀メダリスト・原沢久喜選手(24)がいるなど、次代を担う柔道家を着実に育てている。
今回の選任もこうした育成力を買われてのこととみられる。金野さんは「その器ではない」と一度は固辞したが、命をかければやれると決意し、重責ある任を引き受けたという。
今や世界津々浦々にまで浸透し、独自の進化を遂げている柔道。世界的には、相手に「指導」を与えさせることで優勢を保つような戦い方も多くみられる。金野さんはしっかり技を身に付けさせ、攻めて勝ちにいくという日本の柔道を大切にしながら、パワーに優れる海外の強豪と対等に渡り合うため、伝統だけに縛られない理論的な実践を重ねてきた。
金野さんをよく知る順道館岩﨑道場(陸前高田市米崎町)の岩﨑健二館主(75)は「今の指導者の多くは、その場しのぎで勝てればいいという、駆け引きの柔道ばかり教えがち。その点で金野さんは、その時は勝てなくとも2年、3年後と先を見すえて、選手を大きく育てるような指導をしている」と評する。
また、東日本大震災後は同市へ支援物資を届けたり、子どもたちを対象に柔道教室を開くなど、父の故郷である同市を気にかけてきた金野さん。「厳しい環境でも、子どもたちは純粋に『自分自身を鍛えたい、向上したい』という気持ちを持っていて感動した」と振り返る。
金野さんは「指導者というよりは、監督やコーチ、スタッフが最大限の仕事をできる環境を整備するのが私の仕事。一つ一つの仕事に真摯に向き合い、必ずや日本の方々が喜ぶような結果を」と意気込み、気仙の人々に対しても「粘り強い皆さまなら、完全復興を成し遂げていただけると思っています。そんな皆さまにオリンピックで元気になってもらえるよう、私も頑張ります」と力強いエールを送っている。