綾里・野形地区でまた住宅火災、住民らに不安広がる/大船渡

 3日に住宅火災があったばかりの大船渡市三陸町綾里野形地区で6日夜、住宅など2棟を全焼する火災が発生した。同地区では昨年12月末から、住宅などを焼く火災が相次いでおり、今回が4件目。発生現場は半径約60㍍以内に集中しており、現段階で出火原因は分かっていない。不審火も疑われ、住民の間に不安が広がっている。大船渡警察署では「さまざまな可能性を考えて捜査中」としている。

 

半径60㍍以内に集中、不審火の疑いも

 

 6日の火災で全焼したのは、同町綾里字坂本51の1、無職・坂本雅裕さん(68)宅の住家など2棟。同日午後8時26分ごろ、パトロール中の警察官が火が出ているのを発見した。出火当時、家には坂本さん夫妻がいたが、逃げて無事だった。同署は7日に現場検証を行い、詳しい出火原因を調べている。
 坂本地内を含む野形地区では、昨年12月31日に作業小屋と空き家を焼く火事があった。さらに5月25日には空き家、今月3日には住家と物置が全焼する火災が発生。警察・消防は、いずれの火災の原因も調査中としている。
 4件の火災は半径約60㍍の範囲に集中。発生現場はいずれも三陸鉄道南リアス線北側で、付近には街灯も少なく、幹線道路からも遠い。
 出火時刻は2件が午後8時台、2件が同9時台と人けのない時間帯。今月に入ってからの2件は人が住んでいる家で、いずれも物置の燃え方が激しいなどの共通点がある。
 狭い範囲で住宅火災が相次いでいることに、現場周辺の住民らは不安を隠せないでいる。野形地区の80代男性は「(火災を知らせる)サイレンが鳴って外に出ると、いつも同じ方向が赤く光っている。なぜこんなところで火事が続くのか」と表情をこわばらせる。「もし冬の枯れ草が多い時期に(火災が)起きたら、すぐに山に燃え移ってしまう。そう考えるとゾッとする」と話していた。
 現場周辺住民の中には、不審火を疑う声も多い。今回の坂本さん宅は物置が激しく燃え、母屋の外壁は一部燃え残っている。坂本さんの親族は「あそこ(物置)に火が出るものなんか置いていない」と話す。
 「このあたりは夜になると本当に真っ暗。懐中電灯でもないと土地勘がない人は歩けない」というのは、火災の報を聞いて駆けつけた60代の男性。現場近くに住む70代の女性は「こんなに火事が続くと、怖くて仕方がない。夜も眠れない」とおびえていた。
 5月25日の火災以降、周辺のパトロールを強化していた警察や消防は、3日の火災でさらに警戒を強化。住民らの間にも夜回りをする動きがあったが、その話し合いを始めた矢先に4件目の火災が発生した。
 綾里を受け持つ市消防団第10分団の村上善武分団長(52)は「3件目の火災以降、ポンプ車での夜警を強化していたが、またしても(火災が)起きてしまった」と唇をかむ。「狭い範囲で火災が多発しているとんでもない状況。断定はできないが不審火の可能性もある。出火現場周辺を重点に、さらに警戒を強化する」と話していた。