地域発展へ心一つに、曇天も活気呼び込む/気仙両市3地区で式年大祭

▲ 豊漁を願う大漁旗と郷土芸能の衣装の色合いで、曇天も鮮やかに彩られた=小友町

 陸前高田市小友町の八幡神社(神室宇良子宮司)、横田町の熊野神社(紺野幸宏宮司)、大船渡市日頃市町の五葉山神社(奥山行正宮司)の式年大祭は9日、各町内で挙行された。五穀豊穣や家内安全を祈願し行われる大祭で、震災後は復興への思いを新たにし、住民の絆を深める場ともなっている。曇天となった中、大きな祭りばやしを響かせ、活気を呼び込んだ。

 

新規住民も参加しにぎやかに/小友町

 

 陸前高田市小友町に鎮座する八幡神社では、平成20年以来となる式年大祭が執り行われた。前回までのメーン会場だった只出漁港の復旧工事が続くため、船による神輿の海上渡御などは行われなかったが、震災後に町内への移住者が増えたことで久々の参加を決めた祭組もあり、奉納演舞の数々もにぎやかに繰り広げられた。
 同神社の式年大祭は4年に1度。東日本大震災発生の翌年である24年は実施を見送ったことから、8年ぶりの開催となった。今も震災の影響が色濃く残り、出演できない地区もあったが、茗荷・岩井沢、松山、西の坊、上の坊、門前、谷地、只出、新山、田束、矢の浦・獺沢の10祭組が参加。それぞれこの日のために虎舞や権現舞、獅子舞、剣舞と、地区に残る伝統芸能の練習を重ねてきた。
 同日は同神社と神社前の敷地で大祭式や御旅所祭などを挙行。神輿行列や海上渡御が行われなかった代わりに、各祭組の奉納演舞と、太鼓を乗せた〝山車〟のトラック、はためく大漁旗が会場を華やかに彩った。子どもの出演者も多く、才坊振りとして元気に声をあげて踊る姿に、見守る地域住民も目を細めた。
 大祭実行委員会委員長で総代長の及川常明さん(68)は、「子どもたちに郷土芸能を伝えるうえでも、8年ぶりに開催できてよかった。外から新しく来た人たちも多いし、祭りを機会に町内の団結を図ってもらい、復興を目指したい。4年後には港の工事も終わり、行列を含めた本来のまつりができるのでは」と感無量の様子で語った。

 

強風の中、勇壮な舞を披露した梯子虎舞=横田町

強風の中、勇壮な舞を披露した梯子虎舞=横田町

 

震災後初の開催で町内に笑顔/横田町

 

 陸前高田市横田町本宿に鎮座する熊野神社の五年大祭は平成18年以来10年ぶりの開催。震災後初のお祭りとあって町民らが力を合わせて準備を進めてきた。本番は多くの見物人らに見守られながら手踊りや郷土芸能が奉納され、まちは終日にぎやかな雰囲気に包まれた。
 神社で神幸祭が行われたあと、総勢160人ほどの神輿渡御行列が出発。御旅所の気仙川河川敷を目指し、祭りばやしを響かせながら1・5㌔ほど練り歩いた。
 御旅所では神輿を川の水で清めるなど神事のあと、7区による舞出鹿踊りが奉納された。踊り手らは約230年続くとされる伝統の舞を力強く演じた。
 その後、神社そばの二区部落会館へ移動し、余興の部が行われた。手作りのステージでは各行政区ごとの華やかな踊りや6区による槻沢剣舞が披露され、横田保育園の園児たちも出演した。
 終盤には本宿虎舞が登場。強い風が吹く中、高さ15㍍の梯子(はしご)に果敢にのぼり、たけだけしい舞を繰り広げ、観衆から「いいぞー」と何度も大きな拍手が送られていた。
 主催した大祭実行委の平坂隆義委員長(73)は「10年ぶりとあってみんながこの日を待ち望んでいた。好天とはならなかったが、地域の支えと協力のもと無事まつりを終えることができた。まつりを通じて地域のつながりをより強固なものにしたい」と語った。

 

 

各地域の芸能勇ましく舞う/日頃市町

 

勇ましい音色を響かせた長安寺太鼓=日頃市町

勇ましい音色を響かせた長安寺太鼓=日頃市町

 大船渡市日頃市町に鎮座する五葉山神社の式年大祭は、同町内で行われた。1000人近い行列が練り歩いたほか、日頃市小学校校庭では町内各地域の祭組が余興を披露した。
 午前7時30分に同神社で大祭式が執り行われ、その後、行列が鷹生地区にある鷹生五葉山宇賀神社を目指して歩いた。同神社到着後は再び五葉山神社へと戻り各組が伝統芸能を奉納。沿道には多くの住民が詰めかけ、町内にはおはやしのにぎやかな音色が響いた。
 この後、同校校庭を会場に11地域が計15の余興を披露。手踊りや鹿踊り、太鼓、獅子舞など、各組が地域に伝わる独自の芸能を勇ましく舞った。
 このうち、川内地区のはしご虎舞は、昭和25年に末崎町平地域から伝わったといい、式年大祭のほか、市内外のイベントにも出演している。
 「梯子舞」では、「虎は千里の藪を越す」という言葉の通り、千里を行き千里を帰るたくましさを表現。約15㍍の高さのはしごの上で繰り広げられる踊りに、会場からは大きな歓声が上がっていた。
 会場には約3000人の住民が訪れ、余興を見ながら地域の安寧や五穀豊穣(ほうじょう)を願った。
 村上守克祭典委員長は「なんとか雨もやんで、盛況に終わることができてなにより。各地域も、練習の成果を発揮して素晴らしい余興を披露してくれた」と話していた。

 

■小友町五年祭 

■横田町五年祭

■日頃市町五年祭