力強い鼓動 体に感じる、第28回全国太鼓フェスティバル/陸前高田(別写真あり)
平成28年10月18日付 7面

陸前高田市で平成元年から続く秋の〝風物詩〟「全国太鼓フェスティバル」(実行委主催)は16日、市立第一中学校体育館で開かれた。今年も県内外から人気・実力ともに伯仲する多彩なグループが出演し、それぞれの持ち味を発揮。太鼓ファンたちは一打一打に込められた思いを全身で受け止め、その響きをじっくりと堪能した。
魅力異なる9団体が出演
市民有志らによる実行委員会(熊谷政之会長)が企画・運営する催し。「いのちは鼓動からはじまる」のキャッチフレーズを掲げ、高い技術と表現力を誇る創作太鼓団体や、長い伝統に支えられた民俗芸能など、毎年バラエティー豊かな団体が登場する。中には、平成23年の大震災を経験し「地域を鼓舞したい」という強い思いを持つ東北の太鼓グループや、震災後に太鼓を通じて絆を強めた人たちも含まれる。
今年もチケットである木製の「入場手形」が事前に完売。わずかな当日券を求めて開場前から並ぶ人もあり、会場は500人以上の観客で満杯となった。昼休憩を間にはさむ〝長丁場〟のイベントとあり、弁当や座椅子を持参する慣れたファンの姿も見られた。
出演は登場順に大船渡東高校太鼓部(大船渡市)大館曲げわっぱ太鼓(秋田県大館市)田島太鼓龍巳会「白鼓」(福島県南会津郡南会津町)愛宕陣太鼓連響風組(福島県福島市)気仙町けんか七夕保存会(陸前高田市)富岳太鼓(静岡県御殿場市)ヒダノ修一with太鼓マスターズ・スペシャル!(神奈川県横浜市)安庭民踊省一会(雫石町)豊の国ゆふいん源流太鼓(大分県由布市)の9団体。司会役は、フリーアナウンサーの高橋佳代子さんと、同イベント立ち上げから携わる顧問の及川修一さんが務めた。
同フェス名誉顧問の河野和義さんと、イメージキャラクターのDON太、たかたのゆめちゃんの3者による「しょっきり太鼓」で幕開けすると、世代や構成・演出の異なるそれぞれの団体が大迫力の演舞で観客を魅了。会場からは1曲終わるごとに大歓声と口笛による称賛、拍手がわき上がった。
女性が中心の大館曲げわっぱ太鼓の明るく突き抜けた演奏、男性だけで構成される愛宕陣太鼓の勇壮なバチさばき。エンターテインメント性が高いヒダノ修一さんらによる演舞、伝統を守る安庭省一会の踊りと、持ち味の対照的な団体が出演するのも魅力。5時間という長尺にもかかわらず、最初から最後まで通しで鑑賞する観客がほとんどだった。
高校生が中心の田島太鼓龍巳会や、東高校太鼓部・気仙町けんか七夕太鼓保存会の地元2団体は、次代を担う若手たちが登場しての演奏とあり、はつらつとしたステージを披露。見る人もそのみなぎるエネルギーを感じ取っていた。
東日本大震災が発生した23年も、名古屋市などの協力を得てナゴヤドームでイベントを開催してきた同実行委。同じく大震災を経験した大分県のゆふいん源流太鼓は「一回も催しを途絶えさせず、続けてもらっていることに頭が下がる。耳と目の肥えた陸前高田の皆さまの前で力を抜いた演奏などできない。命をかけて臨む」とあいさつ。また、実行委から同団体へは激励の寄せ書きが贈られ、「共に頑張りましょう」と鼓舞し合った。
平成20年、中学生のときに同団体へ出演したことがあるという茨城県つくば市の武内瑛太郎さん(21)は「皆さんが魂込めた音を鳴らしていて、本当に心に響いてくる。これからもずっとこの音が聞けるよう、イベントを続けてほしい。いつか自分もまた一緒に演奏したい」と感極まった様子で話していた。