大船渡湾口防波堤 来年3月完成へ、復旧工事現場を公開/釜石港湾事務所

▲ 完成を間近に控える湾口防波堤=大船渡

施設高 震災前の倍以上に

 

 東北地方整備局釜石港湾事務所は19日、東日本大震災の津波で被災し、復旧工事を進めている大船渡湾口防波堤の工事現場を報道機関に公開した。9月18日に末崎町側の南堤291㍍で、防波堤の基礎となる鉄筋コンクリート製のケーソン据付が完了し、赤崎町側の北堤244㍍と合わせてすべてのケーソンの据付が終了。今後は残りの上部コンクリート打設などを行い、来年3月に完成を迎える予定。施設高は震災前の倍以上となる。

 大船渡湾の入り口に設置されている湾港防波堤は、臨海部の津波被害の軽減を図るもの。昭和35年に来襲したチリ地震津波後に建設されたが、平成23年の東日本大震災で被災。津波来襲時に、ケーソンを境として港内外に極端な水位差が発生したことにより、ケーソンが不安定となり滑落した。
 新たな防波堤は24年7月に着工し、総事業費は約250億円。数十年から百数十年に一度の津波として考えられる明治三陸大津波級の対応を基準としている。

報道陣に工事進ちょく状況が説明された=同

報道陣に工事進ちょく状況が説明された=同

 湾口防波堤と、防潮堤などの効果的な組み合わせにより、多重的に港湾と市街地を防御することとし、湾港防の施設高は震災前の倍以上となる11・3㍍に設定。建設後の水質環境にも配慮して、防波堤両端部に開放区間、中央開口部の底には通水管も設けている。
 工事では、まず海底に基礎マウンドを製作。台船や陸でケーソンを製作し、重機船によって据付。その後、上部コンクリートを打設していく。北堤には10函、南堤には13函の計23函のケーソンを据付。通水管を備えた基礎マウンドの上には「逆T字ブロック」を設置して、さらにその周囲に石材を投入して安定させている。
 ケーソンの重量は1函約3500㌧で、中央開口部に接する南北両堤のケーソンそれぞれ1函はほかのケーソンよりも大きく約6000㌧となっている。
 重機や人手、資材の不足により完成は1年ほど遅れたものの、19日現在で進ちょく率は9割以上。防波堤としての機能はほぼ確保されている。
 この日は同事務所職員案内のもと、末崎町の旧細浦魚市場から船で現地へと向かった。湾内外から工事現場の様子を確認したほか、ほぼ完成している北堤へと上陸して施設規模や対岸の南堤の作業を見学。
 作業は南堤のケーソンへの上部コンクリート打設などを残すのみで、来年3月の完成を目指す。
 同事務所の松渕知副所長は「津波防護の防波堤が完成間近ということを報告できたので安堵(あんど)感があるが、すべての津波から守れる訳ではない。津波防護は逃げるのが基本ということを啓発していきたい」と話している。