震災で半減も再起、シルバー人材センター会員数増加に手応え/陸前高田

▲ 昨年度から着実に増加する会員。高齢化が進む被災地では高齢者の果たす役割が重要性を増す=陸前高田市内

 東日本大震災で半減した陸前高田市シルバー人材センター(鈴木政行理事長、正会員数246人)の会員数が、昨年度から着実に増加している。いまだ震災前の規模には至っていないが、この2年間で51人増え、平成27年度の増加率は全国11位となった。同年度は事業実績も震災後最高となり、震災前の7割ほどに回復。会員各戸をまわる地道な周知活動の効果が出てきたためといい、目標とする29年度末までの300人台突破も見えてきた。

 

実績も回復基調に

 

 同センターには震災前、約360人が入会していたが、津波で50人が犠牲となり、事務所も半壊するなど甚大な被害を受けた。自宅を失って内陸に住まいを移す人も多く、被災直後の会員数は約180人と半減。23年度の事業実績は前年度の4割余りに落ち込んだ。
 その後、従来から取り組んできた新会員勧誘の広報活動などを継続したが、26年度の会員数は195人と伸び悩んだ。
 打開策として27年度から毎月、手がける事業の▽職種▽就業期間・時間・場所▽募集人員などをチラシにまとめて会員各戸に配布し、ホームページでも随時公開。「業務内容を把握でき、『これならば自分でもできる』」と、定年退職後に帰郷した高齢者らを中心に会員登録が増えたという。
 住宅再建が進み、仮設から恒久住宅に移った高齢者の中で働く意欲が再燃したという状況も後押しし、会員数は37人増え、26年度からの増加率19%は全国11位、新規入会率23・7%は全国19位(いずれも東北シルバー人材センター連絡協議会まとめ)。事業実績も震災後初めて1億円台に達するなど回復基調にある。
 本年度も着実に増加。気仙町会員でつくる気仙班は震災で数人に減ったため、解散して矢作班に籍を置いていたが、10人を超えたため再び組織化された。
 一方、正会員とは別に同センターのサークル活動に参加する特別会員もこれまで数人程度だったが、32人にまで増加。手芸、民謡などの活動に当たりながら、センターの事業に理解を深め、正会員になる人もいるという。
 県内に先駆け、21年度から取り組んできた企業などへの派遣事業も徐々に成果を上げ、求人企業へ会員をあっせんする有料職業紹介事業は27年度、前年度比484人増の656人となった。
 定年退職後、宮城県仙台市から横田町へと戻ってきた畠山実人さん(65)は一昨年春に入会。「30年以上東北を転勤し戻ってきた。仕事を通じて知り合いが増え、地元のことも知ることができる。これからもできる仕事があればぜひ続けていきたい」と充実感をにじませる。
 高齢化が進む中で、知識や経験豊かなシルバー会員の地域に果たす役割は今後さらに重要性を増す。
 鈴木理事長は「行政のバックアップも会員増につながっており非常にありがたい。市や地域の要望にしっかりと応える組織を目指していく」と意欲を語る。