「川下充実」高まる関心、森林認証 〝川上〟の面積は1・5倍に/住田町
平成28年10月22日付 1面
住田町内で20、21の両日、平成15年度にFSC森林認証を受けた同町認証グループ(気仙地方森林組合、町)に対する年次監査が行われ、認証機関の関係者が現地視察として町内を回った。認証取得当初の対象森林面積は9266㌶だったが、町独自の補助制度の浸透などにより、1万3897㌶と約1・5倍に拡大。4年後に控える東京五輪・パラリンピックに合わせた整備では認証材の積極活用につながる動きがあり、町内での広がりにとどまらず制度の強みを生かした「川下拡大」への注目度が高まっている。
五輪需要 追い風なるか
非営利組織のFSC(森林管理協議会、本部・ドイツ)は平成5年に誕生。森林が環境、経済、社会の持続的な発展に向けて適切に管理されていることを国際的に証明する制度を設けた。同町の森林認証グループは16年3月に取得した。
町内森林面積は約3万㌶とされる中、現在の対象面積は1万3897㌶。内訳は、町有林が8722・7㌶、私有林は5174・8㌶。人工林率は51%で、人工林の樹種別割合はスギが58%で最も多く、以下、アカマツ26%、カラマツ14%となっている。
認証を受けると、森林管理を適切に進めているか毎年監査を受けなければならない。今回は英国の認証機関「ソイル・アソシエーション」の日本パートナーとなっているアミタ㈱=本社・東京都=から小川直也氏、中南米・コスタリカから専門家のマウリシオ・ピネダ氏、東京からはFSCジャパンの理事などを務める富村周平氏が訪れた。
20日午後から21日午前にかけ、組合や町職員とともに私有林と町有林計11カ所を視察。同日午後は世田米の気仙地区森林組合で、3時間余りにわたる審査が行われた。
これまでの年次監査などで指摘されていた課題の多くは解決したと認められた。一方で、伐採に伴う作業道運用をはじめ、不具合が明らかになった際の管理者指導のあり方などについて充実・改善を求める声が出た。
町内では制度導入から10年以上が経過し、対象面積は着実に拡大。町有林の増加に加え、私有林に関しても町の補助金事業として「FSCの森整備事業補助金」「FSC森林認証林高齢級間伐事業」が創設され、民間レベルでも理解や普及が広がった。
一方で、森林認証を受けても、すぐに単価やブランド力には反映されにくいといった指摘もある。こうした中、全国的には東京五輪・パラリンピックに合わせた認知向上や、生産材の需要拡大に関心が高まっている。
競技大会の組織委員会は今年に入って「持続可能性に配慮した調達コード・基本原則」を策定。物品調達は地球温暖化をはじめとした環境問題などに配慮し、社会的責任を果たすとしている。
原則では▽どのように供給されるか▽どこから採り、何を使っているか▽資源の有効活用──などを重視。木材分野については、FSCをはじめ各種認証材を持続可能性に配慮した木材として認めるとしている。
富村氏は住田町について「FSCの森林認証は全国で30自治体ぐらいあるが、良い品質の木を生産し、林業へのモチベーションが高いという面ではトップ5に入るのでは」と評価。さらに「FSCをはじめとした森林認証制度の関心や需要は東京五輪に向けて高まっていくと思うが、まだまだこれから。その分可能性を秘めているとも言える」と語る。
気仙地方森林組合の舘脇清参事は「FSC認証は、機械化への対応や若い担い手の確保、安全対策といった面にも波及効果がある」と話す。東京五輪に関しては「良いきっかけになれば」と、課題の一つとなっている流通拡大をはじめとした〝川下〟の充実に向けて期待を込める。