連携の必要性を再認識、市内一斉の防災訓練に7000人余り参加/大船渡(別写真あり)

▲ 各地域の自主防災組織では避難などの各種訓練を展開=猪川町

 大船渡市の防災訓練は23日朝、市内一斉に行われた。東日本大震災後4回目の実施となり、市民ら7000人余りが参加。震災と同程度の災害を想定し、避難路や避難場所の確認、初動体制の構築、防災行政無線の連絡通話機能を使った情報伝達、住田町消防団との合同による訓練などを実施。参加者らは5年7カ月余り前に経験した教訓を胸に臨み、防災意識を高めるとともに住民や地域、関係機関による連携の必要性も再認識した。

 

5年7カ月前の教訓胸に

 

 訓練は、市と大船渡地区消防組合の主催。津波発生時の安全かつ迅速な避難体制の確立と、行政が速やかな災害対応を実施するための防災関係機関相互による協力体制の確立を図るのが狙い。重点には▽迅速かつ確実な避難及び安全確保▽災害時の初動体制の確立▽迅速かつ的確な情報収集伝達の確立──を据えた。
 主会場は設定せず、公民館や自主防災組織による独自訓練を中心に展開。国や県の関係機関、郵便、電気、通信、交通、燃料関連の民間事業者、市との災害時協定締結事業者・団体などにも参加を呼びかけた。
 今回は「三陸沖を震源とする震度6弱の地震が発生し、大津波警報が発表された。市内各地で家屋損壊や停電、断水などが起こり、沿岸部には最大10㍍を超える津波が来襲。建物火災が発生し、延焼拡大の恐れがある」と想定。午前6時30分、防災行政無線で緊急地震速報のサイレンが放送され、訓練が始まった。
 地域住民らは大津波警報の発表、市の避難指示に従い、最寄りの避難場所へ移動。ヘルメットや非常用持ち出し袋を装備したり、隣近所で声を掛け合うなどして、速やかな避難を心がけた。
 このうち、猪川町の上富岡地域公民館(鈴木昭次館長)では、避難誘導や炊き出し、防災無線を活用した広報活動などを内容にした自主防災訓練を展開。サイレンの放送後、公民館に住民が集まると、1~10班の各班長がビブスを着用して点呼を行うなど、例年より充実した取り組みで協力し合った。
 同公民館内では、米が炊ける専用のビニール袋の使用方法の説明や、日本赤十字社県支部大船渡地区リーダーの鎌田律子さん(63)による講話も実施。住民らが震災時の避難生活の日々を振り返り、気を引き締めた。
 指揮を務めた同公民館の千葉昇総務部長(61)は「年々自然災害の発生が顕著になっていることから、今まで通りの訓練ではいけないと思い準備を進めてきた。行政や消防団に頼るだけではなく、自分の身を自分で守れるような地域づくりをこれからも行っていきたい」と熱意をみせていた。

住田町消防団との合同による救助活動訓練も=日頃市町

住田町消防団との合同による救助活動訓練も=日頃市町

 また、今回は初めて住田町消防団(泉田義昭団長)との合同訓練も実施。泉田団長ら団本部と第2分団第2部の団員9人が、後方支援活動に当たった。
 町消防団では大船渡消防署へ支援物資を届け、第2分団第2部の団員5人が日頃市町関谷地内で地元の市消防団第9分団と救助活動訓練を展開。倒壊家屋からの負傷者救出、搬送に臨み、万が一の際の連携を確認した。
 大船渡市消防団の新沼竹美団長(61)は「大きな災害が相次ぐ中、今後は気仙全体が協力しなければならないと考える。住田町消防団との合同訓練はその第一歩。今後は陸前高田市にも声をかけて連携を進めていきたい」と話していた。
 このほか、新たには震災後に新設した防災行政無線の連絡通話機能を使い、各地域との通信訓練も。各地域では通話機能の使用方法や本部との連絡が可能かを確認し、有事に備えていた。
 市防災管理室によると、今回の訓練参加者数は総勢7071人。「沿岸地域を中心に多くの市民が避難し、市民の高い防災意識が確認された。多くの地域で自主防災組織が避難場所や避難経路の確認に取り組んだほか、炊き出しや消火訓練などを独自に行うなど、防災意識がより向上していることが感じられた」などと総括。
 「大災害に備え、市民一人一人の防災意識の高揚をいっそう図るとともに、防災関係機関や地域との連携を強化し、防災対策に万全を期していきたい」としている。