小径木輸出 活路と課題 スギ材や港湾の振興に/気仙地方森組など

▲ 輸出向けに集荷されているスギの小径木=大船渡港

 大船渡港に集荷し、中国、台湾向けに気仙産スギ小径木を輸出する取り組みは、開始から2年が経過した。これまで出した量は1万立方㍍を超え、現在も12月までに約2100立方㍍を台湾に輸出するために、大船渡市や住田町で生産されたスギ材が茶屋前ふ頭に集まり続ける。限定的だった小径木の販路拡大や、港湾振興に期待が集まる一方、安定的な需要に対応する広範囲での連携構築などが課題として浮かび上がる。

 

広範囲での連携不可欠

大船渡港から中国、台湾へ

 

 気仙地方森林組合などによると、中国向けの輸出木材集積は日本製紙木材㈱から依頼を受け、平成26年11月から始まった。同組合や陸前高田市森林組合、地元素材製材業者の協力で、10〜16㌢のスギ小径木を集めてきた。
 26年度はコンテナで輸出。27年度はバラ積みで、計7000立方㍍を中国に輸出した。
 28年度は夏までに4746立方㍍を出したほか、さらに12月までに約2100立方㍍を輸出する計画。現在は気仙地方森林組合が中心となり、大船渡市や住田町からのスギ材を大船渡港に運び込んでいる。現地では建設用材などとして活用されているという。
 東日本大震災前、大船渡港での丸太の集積は当たり前の光景だったが、輸入材が中心。日本製紙木材からの依頼ではあるが、同組合が関わる海外向けのスギ材輸出は今回が初めてのケースとなる。
 高台での三陸沿岸道路整備や宅地造成など、復興関連工事では多量の小径木が切り出された。一方で販路は、バイオマス燃料としての活用などに限られていた。
 気仙3市町は豊富な森林資源を持つ中、小径木の多様な活用は大きな課題の一つ。復興支援の意味も込めてカキ養殖いかだ用に丸太販売が行われた実績があるものの、今後もより高値で取引される販路の拡大が望まれる。
 平成29年度以降の輸出継続や拡大に期待が高まる一方、同組合では「組合単体での動きだけでは難しい」と慎重な姿勢を見せる。高台部の復興事業が落ち着いた中、まとまった量を確保する体制構築を課題の一つとして挙げる。
 小径木の確保は天候不順にも影響を受ける。安定的な大船渡港への運び出しには、各木材生産関係者による広域的な連携の重要性が浮かび上がる。
 同港利用は、気仙の各業者にとって内陸部に運ぶよりも輸送費用低減が見込まれる。加えて、港湾振興寄与といった面でも関心は高い。国も木材輸出促進を掲げる中で、林業関係者の中では行政などによる港湾施設利用料の低減や助成の必要性も話題に上る。
 気仙地方森林組合の枛木澤光毅代表理事組合長は「小径木の販路が生まれたということがいちばんのメリット。小径木を売る場が増えれば単価は上がり、組合員に還元できる可能性も広がる。大径木を含めたトータルとしての生産力向上につながる。だが一組合が、小径木だけを生産するわけにもいかない。基本的には継続したい」と話す。