秋サケ漁不振続く、数量は昨年の5割以下/大船渡魚市場

▲ 本年度も不漁となっている秋サケ=大船渡市魚市場

 本県の定置網による秋サケ漁はまもなく最盛期を迎えるが、県全体で不振が続いている。大船渡市魚市場への水揚げ数も昨年度比で50%以上減少し、記録的な不漁となった平成27年を大幅に下回っている。東日本大震災後の稚魚放流数の減少や海水温が高いことなどが要因として挙げられており、秋サケ回帰ピークの11月下旬から12月上旬にかけての漁況回復を期待する声もあるが、市場関係者は回帰数の厳しさに不安を募らせている。

 

単価上昇も累計金額減、放流数減や海水温影響

 

 県農林水産部水産振興課が発表した秋サケ漁獲速報(10月20日現在)によると、本年度の県内定置網漁獲量は前年度比42・2%減の676㌧。金額は4億8800万円で、同21%減となっている。不漁に伴い、1㌔当たり平均単価は同36・7%増の721円。
 このうち、大船渡市魚市場への水揚げ量は今月3日現在、過去最低だった昨年度と比べても52・4%減の163・917㌧、金額は33・4%減の1億3519万円(税込み)と大不漁。1㌔当たり平均単価は806円(同)と高値だが、それでも量の不足をカバーしきれていない。
 同魚市場への水揚げ量は、震災前の22年は2137㌧、震災があった23年とその翌年は800㌧台と低迷。25年は2710㌧、26年は2576㌧と持ち直したが、27年は過去最低の762㌧にまで落ち込み、秋サケの水揚げ量が1000㌧台を超えた昭和55年から数えると過去35年間で最低の水揚げ量となった。
 今年はそれをさらに下回るペースで、秋サケが姿を見せ始めた8月中の水揚げをみると、今期は昨年の10分の1しか水揚げされておらず、9、10月中も漁が振るわないまま11月を迎えた。例年ならばこの時期には一日1万匹以上が水揚げされるが、今年は最多でも7000匹台にとどまっている。
 県水産技術センターがこのほど発表した予報によると、本年度の回帰量は、震災前5カ年平均の半分以下と低い水準にあると予想され、このため採卵計画の達成が難しくなる可能性があるとしている。
 4・5歳魚として回帰する23・24年級が採卵された年は、いずれの年も親魚の回帰重量が1万㌧を下回っており、種卵の確保が困難な年であったこと、さらに稚魚の放流数が震災前の7割程度であることから、その影響も懸念されるとしている。
 さらには、本県沖には10月中旬になっても表面水温20度以上の暖水塊があり、15度以下が適水温の秋サケの岸側への移動を妨げているとみられる。
 気仙沿岸のみならず、県内沿岸定置網漁の主力魚種となっている秋サケの不漁は大きな痛手。市魚市場を運営する大船渡魚市場㈱の佐藤光男専務は「サケは地場の経済に及ぼす影響が大きい。これまで20億円取れていたのが去年は5億円。その差額15億円が地元に落ちなかったことになる。予報的には11月下旬から12月上旬にはサケが来るとされているので、そこで爆発的に取れてくれれば」と漁期後半での巻き返しに期待を込める。