鹿踊の広がりを知る、「けせんのたから」初開催/住田(別写真あり)

▲ 躍動感あふれる舞で魅了した水戸辺鹿子躍のステージ=住田町農林会館

3団体が演舞

 

各鹿踊団体の継承活動などを発信する座談会も=同

各鹿踊団体の継承活動などを発信する座談会も=同

 気仙各地に伝統芸能として受け継がれる鹿踊に光を当てた初のイベント「けせんのたから2016気仙民俗芸能祭」(気仙伝統文化活性化委員会主催)は6日、住田町農林会館で開かれた。江戸時代以降の広がりに関する講演に加え、気仙における行山流鹿踊のルーツとされる地で伝わる水戸辺鹿子躍(南三陸町)をはじめ3団体のステージもあり、来訪者は多彩な角度から郷土の誇りを見つめ直した。

 鹿踊に関する講演、演舞鑑賞を通じて今後の継承活動のあり方などについて認識共有を図ろうと初めて企画。住田町や町教委、町郷土芸能団体連絡協議会が共催し、県や気仙両市の各教委、町観光協会が後援。文化庁の「平成28年度文化遺産を活かした地域活性化事業」として芸術振興費補助金を受けた。
 気仙内外から幅広い世代の住民およそ200人が訪れ、外国人の姿も目立った。冒頭、活性化委員会の山口康文委員長は「伝統文化は人のつながりをもたらし、地域もまとまっていく」とあいさつした。
 前半は「宮城・岩手の鹿踊」として、東北民俗の会の及川宏幸氏が講演。背中に長い「ささら」があり、太鼓を打ち鳴らして舞う「太鼓系鹿踊」は仙台藩内の宮城県北・岩手県南にしか見られない特異性があるとし、気仙に広まったルーツを説明した。
 気仙には、途絶えた鹿踊も含めて13団体あるが、ほとんどが「行山流」。17世紀に現在の本吉郡南三陸町水戸辺の仙台藩士・伊藤伴内持遠から広がったとされる。及川氏はさらに、大船渡の前田、小通、坂本沢、笹崎各鹿踊は「(本吉郡)入谷の四郎兵衛」から、住田町の外舘や陸前高田市の舞出鹿踊などは「(一関市大東)大原の又助」から伝授したことが各種文献からうかがえるとした。
 また、「気仙各地からさらに他地域に伝えることはなかったようだ」「元々は9人で踊る伝書・伝承が多い」と言及。鹿踊の歴史を系統的に解説し、出席者の関心を引きつけた。
 引き続き座談会「鹿踊のこれまでとこれから」が行われ、國學院大学教授の茂木栄氏が司会を務めた。行山流各鹿踊の関係者や及川氏らが並び、躍りや各保存会活動の特徴などを語り合った。
 後半は生出鹿踊(陸前高田市)の上映披露に続き、水戸辺鹿子躍、笹崎鹿踊り(大船渡市)、柿内沢鹿踊(住田町)の順で躍動感あふれる舞が繰り広げられた。
 同じ行山流ながら数百年にわたる地域伝承によって個性が磨かれたとあって、来訪者は各団体の違いやこだわりを堪能。伝統芸能継承の重要性を再認識していた。