「ウッドタウン」形成いかに、デザイン会議で議論/住田町

▲ 中心地の建造物をまとめた模型も置かれた中で行われたデザイン会議=役場庁舎内

 大船渡消防署住田分署の移転新築事業を進める住田町は本年度新たに、分署周辺の景観やまちづくりの整合性を考える「デザイン会議」を設けた。木造の新分署は現役場庁舎の道路向かいに整備され、建設予定地周辺では今後公共施設再編の動きが進む。単に施設機能の充実を追い求めるだけでなく「ウッドタウン」の形成を図る取り組みで、議論の行方が注目される。

 

新分署整備、周辺景観にも配慮

 

 新分署は、平成26年に完成した木造の役場新庁舎と野球場の間に用地を確保。30年3月の完成を見据え、現在基本設計が進む。
 町は新分署を、防災機能を担うだけでなく中心市街地における中核施設の一翼とも位置付ける。議会や図書室が入る生活改善センターの改築予定をはじめ公共施設再編の動きが進む中、個々に施設を整備するのではなく包括的に取り組むべきとの観点から「デザイン会議」の設置を決めた。
 会議メンバーは大月敏雄氏(東京大学教授)柴田久氏(福岡大学同)藤田香織氏(東京大学准教授)佐々木洋文氏(住田分署長)泉田義昭氏(町消防団長)横澤孝氏(副町長)佐藤英司氏(町総務課長)の7人。いずれも、工事設計業務プロポーザルで審査員を務めた。
 第1回会議は5日に役場で開かれ、町建設課、総務課や地区消防組合住田分署の各職員、設計業務を担う㈱SALHAUS一級建築事務所(東京都)の関係者約20人が出席。会議の委員長は大月氏、副委員長は柴田氏と藤田氏が務めることになった。
 SALHAUS社による現段階での基本設計説明によると、新分署は木造2階建て構造。2階に事務室や研修室、1階に車庫や展示ギャラリーなどを配置する方向で進められている。
 木材はすべて町内から調達し、集成材などとして建築に活用。新たな木材加工技術として注目が高まっているCLT(直交集成板)も導入を検討している現状も示された。
 また、事務局役を務める町建設課からは、26年度に定めた中心地域活性化基本計画に関連する各課別所管事業の説明も。総務課は議場や図書館などの新築に加え、役場旧庁舎や倉庫3棟の解体などを担当する。
 教育委員会では登録文化財制度の普及を進め、農政課は案内看板制作など「木いくプロジェクト」を展開。林政課は「花の森公園構想」を抱えるほか、県事業では昭和橋架け替えもある。
 出席者はアスファルト敷きが予想される駐車場スペースの景観や配置、役場と新消防庁舎を挟む町道沿いの整備のあり方などで議論。高齢化率が40%を超える中、利便性や心地良さを福祉の観点から考える重要性も話題に上った。
 新分署周辺には町営球場があり、野球だけでなく高齢者らによるグラウンド・ゴルフやニュースポーツ・クッブでも盛んに利用。隣接するふれあい広場は子ども向け遊具が充実しており、休日になると気仙両市からも親子連れが多く訪れる。今後の会議では、こうした来訪者の利便性をどう高めるかといった議論も求められる。
 さらに、29年度以降、役場周辺の町道では気仙初となる「ゾーン30」が導入される見込み。登下校児童をはじめ歩行者の安全確保を図ろうと車両の最高速度を30㌔に規制するもので、住民や来訪者がより歩きやすい施策が導入される。
 大月氏はデザイン会議の方向性について「順次公共施設の建て替えをして『ウッドタウンの中心地』を形成していく観点で考えている。良い建物は当然だが、全体を良い形にしなければ」と語る。
 そのうえで「消防分署の機能やデザインが、次の公共建築整備につながるような仕上がりになるかを意識しながら議論が進むのでは」と、今後を見据える。会議は年度内に3回設ける計画で、次回は来年1月13日(金)に予定している。