古川沼で潜水捜索、不明者親族の思い胸に/陸前高田

▲ 厳しい寒さの中で行われた潜水捜索=陸前高田市・古川沼

 東日本大震災発災から5年8カ月となった11日、陸前高田市高田松原地区にある古川沼で岩手県警や海上保安庁などによる潜水捜索が行われた。古川沼の捜索は行方不明者の家族らが強く望んでいたもので、がれきなどが多く沈むとみられる地点を中心にダイバーが水中に入り捜索。厳しい寒さと降雨の中で懸命に作業にあたる光景を見届けた家族らは、さまざまな思いを寄せた。

 

県警や海保が実施

 

 震災による同市での死者は1556人で、いまだ204人が行方不明。今年2月、行方不明者の家族から市議会に対して古川沼底及び広田湾海底の捜索を求める請願が出され、採択に至った。市はこの請願を受け、関係機関に行方不明者の捜索要望を行ってきた。
 岩手県警と釜石海上保安部による捜索活動は当初9月11日に予定されていたが、県北部での台風10号による不明者捜索を行うため延期に。この日は県警機動隊15人、釜石海保からは派遣を受けた仙台航空基地機動救難士も含め7人が参加。市側は民生部の菅野利尚部長らが立ち会った。
 水中での捜索を前に、関係者全員で黙とう。水面のマーキング地点を目指してゴムボートで移動し、行方不明者の手がかりになるものを捜し続けた。
 このマーキングは、今月5日に東海大学海洋学部の坂本泉准教授(53)らが効率的に潜水できるよう施したもの。多くのがれきが沈んでいると分かった25地点に重しをつけたペットボトルを浮かべた。今回は、14地点で捜索が行われた。
 開始時から雨が降り続き、沼の水温は4・8度と冷たく、ダイバーにとっては厳しい環境での捜索。行方不明者の手がかりを求め続ける市民らは、傘を手に静かに見守った。
 米崎町在住の松田征也さん(75)は、震災で親族7人が犠牲となり、当時松原に近い高田町曲松に住んでいた弟・育也さんが唯一行方不明となっている。捜索を求める署名活動では、家族らと協力しながら400筆以上を集めた。
 これまで、海岸に近い古川沼に足を運ぶのにはためらいがあったが「もしかしたら」との思いは持ち続けていた。「捜索はありがたく、一人でも多くの手がかりが見つかってくれれば。悲しみは今も変わることはない」と話していた。
 捜索後、高田町のタピック45にある復興まちづくり情報館では沼底を撮影したビデオが公開された。海保関係者らが撮影した映像をもとに水中の状況を説明した。市民からは底部の泥や堆積物をすくいとった形での捜索を望む声も出た。
 12日には、同沼で市職員有志による「遺留品捜索活動」も予定。職員30人余りとNPO法人を通じたボランティアが参加する。