道慶の遺徳を改めて知る日に、19日に光照寺で「道慶忌」/陸前高田

▲ 86歳の道慶翁が両村漁民を諭す決意をし、自刎したとされる気仙川。現在もサケが産卵のためにそ上する

 陸前高田市の伝説的人物として知られる村上道慶(1558~1644年)の命日に合わせて19日(土)、その墓が残る高田町・光照寺(髙澤公省住職)で「道慶忌」が開催される。江戸時代初期、自らの身をていして気仙川のサケ漁をめぐる紛争を鎮めた偉人の遺徳から、現代に通じる学びを得ようと、法要・墓参のほか劇画『道慶根』の上映会などが行われる。入場無料で誰でも参加可能。

 

実行委員会形式で初開催 

 

 道慶(本名・村上織部)の先祖は因幡(鳥取県)の武士。父とともに今泉村へ移住し、道慶の代になってから高田村へと移った。今泉村でも寺子屋を開いていたが、元和元年(1615)には高田村で「西光庵」を開設して師弟の教育にあたり、両村の村民から尊敬を集めていたという。
 しかし寛永14年(1637)のこと。漁村の間でサケの漁業権をめぐる紛争が起き、ついには流血の惨事へと発展。いずれの村にもゆかりがあり、瀬主(漁業権の責任者)でもあった道慶は何年も続く争いに心を痛め、自らの首をはねることで村民たちをいさめ、無益ないさかいを終結させたと伝えられる。
 今でも地元では「道慶翁」「道慶さん」として親しまれ、平成5年には350回忌法要も実施。23年の大津波で被害を受けたものの、市内には複数の供養碑も建てられていた。また命日である旧暦の10月20日には、高田地区コミュニティ推進協議会主催で「先人感謝祭」が営まれてきた。
 一方、震災後の状況の変化によって同協議会での実施が難しくなったことを受け、今年から有志の実行委員会を立ち上げ、「道慶忌」として新たな行事開催を決定。これまで以上に道慶の行動や思いについて深く掘り下げ、市民に翁の人物像と遺徳を伝えるとともに、そこから学びを得る会とする。
 当日は道慶が眠る光照寺で373回忌法要を行ったあと、平田弘史さんの漫画『無名の人々 異色列伝』に描かれた『道慶根』をベースとした劇画を上映する。光照寺の髙澤公省住職(62)は、「高田町と気仙町のご寺院からもご協力をいただいての初開催。道慶さんを通じてさまざまな壁をとりはらい、皆さんが聞かされてきた話の中に含まれているであろう〝誤解〟も是正していきたい」と語る。
 「自刎は、単なる責任感や逃避からの行動ではなく、ひたすら和平を願い、両村を愛した人だからこそ、村人たちが世間の笑い者となるのを避けたかったという背景がある」と髙澤住職。「自らの首を切り落としたという部分だけクローズアップするのではなく、どうしてそうせざるを得なかったのかという部分をじっくり取り上げていきたい」といい、関心を持つ人々に広く来場を呼びかける。
 法要は午後2時開始。同30分から劇画のDVD上映と解説、3時30分から墓参を執り行う。問い合わせは髙澤住職(℡090・3120・1962)まで。