大船渡で津波40㌢観測、注意報受け860人余避難/気仙両市(別写真あり)

▲ 高台の避難所から大船渡湾を見つめる市民ら=大船渡地区公民館

 福島県沖で22日午前5時59分ごろ発生した推定マグニチュード(M)7・4の地震で、気象庁は福島、宮城両県沿岸に津波警報、本県と茨城、千葉の各県沿岸に津波注意報を発表した。大船渡、陸前高田の気仙両市では、沿岸部の住民らに高台への避難勧告を出し、最大で約860人が避難所に身を寄せ不安な時間を過ごした。大船渡港では地震発生からおよそ2時間後に最大波40㌢の津波を観測。注意報は午後0時50分に解除され、目立った被害は確認されなかったが、学校の休校や公共交通機関の運休、商業施設の営業見合わせなど、住民生活に影響が広がった。(7面に関連記事)

 

福島沖でM7・4地震、早朝の揺れに緊張走る

 

 気象庁によると、震源は福島県沖の深さ25㌔。同県中通り、浜通り、茨城県北部、栃木県北部で最大震度5弱、気仙は住田町で震度3、大船渡、陸前高田両市で震度2を記録した。
 これに伴い、同庁は午前6時2分、福島県沿岸に津波警報、青森県太平洋側、岩手、宮城、茨城、千葉の各県沿岸に津波注意報を発表。のちに宮城県沿岸は警報に切り替えた。
 大船渡、陸前高田両市では沿岸部や東日本大震災浸水域に避難勧告を出し、ピークで大船渡は618人、陸前高田は246人が避難所に身を寄せ、テレビの情報に見入るなどしながら注意報の解除を待った。
 大船渡港では午前7時56分に最大波40㌢の津波を観測。気仙での津波観測は、同港で30㌢が確認された昨年9月19日のチリ地震以来となった。地震後、沖へ避難する船も。大船渡市魚市場はフォークリフトを2階駐車場に上げるなどして備え、釜石、宮古の魚市場と協議して午前10時30分に再開した。
 

津波注意報を受けて綾里駅で停車する三陸鉄道南リアス線の始発列車=大船渡市三陸町

津波注意報を受けて綾里駅で停車する三陸鉄道南リアス線の始発列車=大船渡市三陸町

JR大船渡線BRT(気仙沼―盛)と三陸鉄道南リアス線は全区間、県交通は気仙両市にかかる一部の路線で運行を見合わせ。BRTは始発からの上下各2便に合わせて10人の乗客があったが、途中下車しタクシーなどで移動。三鉄は始発の下り列車が綾里駅まで進んでいたが乗客はなかった。
 気仙両市の小中学校や高校、支援学校は休校に。震災浸水域ではコンビニエンスストアやスーパー、銀行などが営業を見合わせ。海沿いの復興関連工事現場も稼働を見送り、槌音が響く普段と一転して静けさに包まれた。
 注意報は午後0時50分にすべて解除された。この後、公共交通機関や商業施設は順次再開した。
 同日午後5時現在、気仙両市には人的、物的被害の報告は入っていない。過去の数十㌢級の津波では、潮の流れが変わることで海上の養殖施設でロープがからまるなどの被害が出たケースもあり、今回の影響も心配される。
 気象庁では、今後1週間ほどは同規模の地震発生が見込まれるとして、引き続き注意を呼びかけている。

 

ピーク時で618人避難/大船渡市

 

 大船渡市は津波注意報発表に伴い、災害警戒本部を設置。市内沿岸地区の1267世帯3074人に避難勧告を発令し、防災無線で高台への避難、注意喚起を呼びかけるとともに、情報収集にあたった。
 市防災管理室によると、市内8カ所に避難所が設けられ、ピーク時の7時45分には618人が避難。けが人、建物などへの被害の情報は入っていないという。
 津波注意報を受け、市内の小中学校20校と、県立大船渡、大船渡東の各高校、気仙光陵支援学校では臨時休校の措置をとった。市が運営するこども園では、自宅待機が呼びかけられた。
 沿岸部で行われている市発注の土地区画整理事業、漁業施設などの復興工事現場では、注意報の発令中、作業を休止。この日予定していた、市主催の地域安全推進協議会委員委嘱状交付式、復興計画推進委員会は延期となった。
 市は、津波注意報の解除に伴い、午後0時50分に同本部を廃止。今後は養殖施設など漁業関係の被害状況について、各漁協とともに調査に当たるとしている。

 

震災浸水区域に避難呼びかけ/陸前高田市

 

 陸前高田市は、注意報の発表を受けて災害警戒本部を設置。東日本大震災の浸水区域内に暮らす329世帯、1049人を対象に避難勧告を出した。浸水区域に入らないよう防災無線放送などで呼びかけたほか、海岸部へとつながる道路では消防車両が警戒にあたった。
 市内の避難所へは、ピーク時で35カ所に計246人が避難。低地部に事業所がある復旧・復興工事関係者も業務を中止し、高台へ避難した。市内の小中学校あわせて11校と県立高田高校は休校の措置を取った。
 米崎町のイオンスーパーセンター陸前高田や、竹駒町・国道340号沿いの仮設店舗など、浸水区域にある商業施設はほぼ営業を停止。従業員たちは津波注意報解除となるまで自宅待機を命じられるなどしていたが、注意報解除に伴い午後からオープンするところが多かった。
 この地震によるけが人などの情報は入っていない。

 

高校で中間考査延期に/住田町

 

 住田町内では、小中学校で通常通り授業が行われたほか、役場をはじめとした行政機関でも目立った影響はなかった。一方、県立住田高校(楳原健校長、生徒108人)では、通常は三陸鉄道やバスなどを利用して気仙両市から通う38人が欠席した。
 同校では中間考査が予定されていたが、24日に延期。登校した生徒に対しては午前11時まで自主学習の措置がとられ、その後は放課とした。保護者が迎えに来るなど浸水域を経由して帰宅しなければならない生徒たちには、解除まで校内にとどまるよう指示した。