「気仙宣言」効果じわり、土曜閉所や定時退社増える/復興関連工事現場

▲ 気仙宣言に基づく取り組みの効果検証結果が報告されたフォローアップ会合=大船渡労基署

 大船渡労働基準監督署(熊谷久署長)は、震災復旧・復興工事での過重労働解消を図ろうと、今年5月に行政など発注者と受注業者らで採択した「気仙宣言」に基づく取り組みの効果検証結果を示した。それによると、請負金額20億円以上の大規模現場では月1回以上の土曜閉所(日曜日以外の現場全休日含む)や定時退社の回数が前年に比べて大幅に増えるなど、一定の成果が数字に表れている。

 

過重労働解消へ効果検証の結果報告

 

 気仙宣言は、東日本大震災復旧・復興関連工事の過重労働解消を図っていこうと、行政など発注側6者と、受注業者ら6者が同労基署の呼びかけで参集した「気仙会議」席上、全会一致で採択されたもの。その実効性を上げようと、実務担当者レベルのフォローアップ会合を定期的に開いている。
 3回目となる会合が21日に開かれ、16人が出席。協議は非公開で、労基署によると、宣言に基づき▽月1回の土曜閉所▽月1回以上の定時退社▽時間外・休日労働が月80時間超の労働者数──を指標とし、8月から10月にかけて気仙地区内の24の大規模現場と、21の中小規模現場(建設業協会大船渡支部所属企業)を対象に実施した効果検証の結果を報告。これをめぐって意見を交わした。
 効果検証結果によると、前年同期と比べた土曜閉所回数は、大規模現場で比較期間中に稼働していた18現場を見ると、お盆休みのある8月は昨年の58回に比べ今年は56回とほぼ同じだったが、9月は前年5回に対して今年14回、10月は前年2回に対して16回と増えた。定時退社も、前年同期比で8月が15回から50回、9月が17回から54回、10月が13回から51回と大幅に増えた。
 過労死ラインとされる時間外・休日労働が月80時間超の労働者数は、8月が前年、今年とも5人で変わらず、9月は前年23人に対して今年7人、10月が前年15人に対して3人と減った。
 取り組みの工夫例としては、「あらかじめ月1土曜閉所を組み込んだ月間工程表を作成し、協力会社とも一体となって実施」「夕方の打ち合わせ開始時刻を早め、課題を絞った運営で時間短縮も図った」などがあり、「定時退社を確実に実施するため、毎週第1水曜日に職員宿舎で焼き肉をすることにした」という事例も。
 気仙宣言が過重労働解消に役立ったかについて、「非常に思う」と「思う」の回答が合わせて83%と高い評価だった。
 一方、宣言実現や継続に向けた課題としては、社内や現場のものとして「協力会社の社員が日給月給のため、休みを増やすと賃金に影響することから説得に苦慮した」、発注者にも関連するものでは「少人数の現場で交代勤務は困難で、契約時から余裕のある工期設定が不可欠」「原価に余裕がなければ休暇の取得は難しい。利益を確保できる受注環境の整備が必要」といった声が寄せられた。
 中小規模現場は土曜閉所が微増、定時退社はほぼ横ばい、80時間超労働者数は微減。気仙宣言の効果については、役立ったとする評価が6割、役立っていないとの評価が4割。実現に向けた課題としては、大規模現場と同様に積算単価見直しなどが上がった。
 これら結果について、熊谷署長は「気仙宣言により取り組みが一定程度進んだことを表す数字になったととらえている。緒に就いたばかりで課題も多いが、継続して発展させられるよう参集者と協議していきたい」とする。
 今後、報告書としてまとめ参集者に配布することとしており、来年2月に予定する次回フォローアップ会合で詳細を協議するという。同署の小林夏樹監督課長は「課題を洗い出せたことも成果の一つ。震災復興の教訓として、参集団体だけでなく関係機関との共有も図っていければ」としている。