「地域予算制度」導入へ、町民税収入の2%で5地区の協働活動促進/住田町

▲ 町内地区単位で行われている運動会。この枠組みを生かした持続可能な地域づくりを見据える=10月、大股地区

 住田町は、平成29年度から本格的に取り組む「みんなで創る新しい『地域づくり』の仕組み」案をまとめた。世田米、大股、下有住、上有住、五葉の5地区ごとで地域ビジョンの策定・実践を目指し、活動財源として住民組織側に歳出の自由度を持たせる地域交付金を新たに創設。町民税収入の2%に当たる総額400万円を5地区に配分する「地域予算制度」を導入する。各地区に配置される地域おこし協力隊員らとの連動も見据え、各地区の実情や住民意欲に沿った活動を支える展開を描いている。

 

29年度から3年間

 

 町は24~28年度の総合計画後期基本計画の中で地区別計画を策定。地域づくり推進事業として住民協働のまちづくりを進めてきた。この考え方を29年度以降も継承する一方、少子高齢化・人口減少が進む中での地域社会づくりを見据える。
 現在、住民の基礎集団である自治公民館は、町内に22組織ある。環境美化や敬老会活動などを担う一方、組織によっては1ケタの構成世帯も見られ、高齢化率が50%を超える地域も出ている。
 今後は地域課題解決が困難な状況が増え、より深刻度が高まる状況も予想される。こうした中、町は自治公民館が担っていた役割を地区公民館エリアに移行するなど、より大きな範囲で地域協働の仕組みづくりを整える必要性を掲げる。
 推進に向けた地域協働組織に関しては、地域の各種団体や住民に呼びかけ、学習会を開催するなどして設立を目指す。これまでの総合計画で組織した「地域づくり委員会」などの組織継承も可とし、地域住民間での話し合いや課題解決、地域の実情や資源を生かした取り組みを進める。
 活動拠点には、各地区公民館を位置づける。人的支援では、地元出身者による集落支援員と、移住・定住人材の地域おこし協力隊員を配置。すでに集落支援員は5地区に配置しており、協力隊員は世田米で1人が活動。12月から五葉に1人が就き、残り3地区では来年4月着任予定となっている。
 財政的な支援として、地域交付金を創設。地域ビジョンの策定に向けた新たな事業実施に必要な経費を充てるもので、従来の補助金のような使途制限を加えず、地域の裁量を尊重した「地域予算制度」として運営する形を目指す。
 年度あたりの総額は、町民税の2%にあたる400万円で、5地区に配分。29~31年度の3年間とし、期間後半に活用する事業財源としての繰り越しも認める。
 各地区における拠点づくりのテーマは当面、地域おこし隊員募集時の設定と同じ。世田米は歴史・伝統的建造群や「まち家世田米駅」を活用した交流人口拡大、中心地域の活性化を掲げる。
 大股は木造校舎を活用した交流人口の拡大や、体験イベント、ツアー企画など。下有住は遊休農地活用や農業体験、新規就農者の受け入れ、コミュニティービジネス構築となっている。
 上有住は地域資源を活用した景観、観光、特産品の掘り起こしなど。五葉は滝観洞や五葉山、火縄銃鉄砲隊などの地域資源を活用した観光振興などとしている。
 町によると、10月末現在の町内人口は5850人。前年度まとめた人口ビジョンでは、出生率の向上や社会増減ゼロを目指し、2040年(平成52)には約4000人の人口を目指すとしている。
 こうした案は、26日に開かれた総合計画・人口ビジョン・総合戦略推進委員会の場で町が説明。委員からは「企画がユニークな団体には多く配分するといった差をつけては」「予算を消化するためだけに住民が集まらないように」といった意見が出たほか、交付金を財源としながら新たな補助金を組み合わせ、コミュニティビジネスなどを立ち上げる方向性も話題に上った。
 町では、新年度予算に関連事業費を計上する方針。「計画を立てることが目的ではなく、住民の皆さんが集まり、やりたいことや地域課題を話し合ってもらい、その取り組みを実際に行う形を目指したい」としている。