アマでも〝世界レベル〟に、木村さん(陸前高田)のギター演奏
平成28年12月3日付 7面

家業を支えながら、アマチュアギタリスト・作曲家として活動する陸前高田市の木村洋平さん(30)が、その演奏技術で頭角を現している。世界中から5000人規模が応募するコンテストでもベスト10入りを果たしたほか、専門誌『ヤング・ギター』(シンコーミュージック・エンタテイメント)による企画でもこのほどグランプリを獲得した。同企画は、著名なギタリスト、ヌーノ・ベッテンコート氏との〝セッション〟を想定したもので、ヌーノ氏自身が木村さんをナンバーワンに選出した。
数々のコンテストで活躍、プロからも高い評価
木村さんは、おかし工房木村屋(高田町、木村昌之社長)の4代目。震災後に地元へ戻って家業を手伝う傍ら、ギターを中心としたインストゥルメンタル(器楽曲)のCDも3枚リリースしている。動画サイトにアップした楽曲やギター演奏動画は、玄人からも高い評価を得ており、多くのファンを獲得。現在は、音楽スタジオのブログにギター教則の記事も寄稿する。
中学の時に始めたギターの腕前はプロ級で、高い技術を必要とする早弾きなども難なくこなす。ヤング・ギター誌における「フレーズ完コピ大賞」(雑誌に掲載された課題曲をいかに完璧に弾けるか競うもの)でも、数度グランプリを獲得するなど、積極的に〝実力試し〟にも挑戦。海外のギターメーカーなどが主催する数千人規模の大会でも、トップ10、トップ30入りするなど、日本を代表する演奏家として認められつつある。
木村さんが今回応募したのは、同誌の「ヌーノに挑戦!」という企画。ヌーノ氏はアメリカの伝説的なロックバンド「エクストリーム」のギタリスト。企画は、出版社が用意したバックトラックに乗せてヌーノ氏がソロギターを弾き、その合間に読者がオリジナル演奏を加える──というもの。
およそ100人の応募から数人が絞り込まれ、コンサートのため来日していたヌーノ氏がじきじきに審査。プロとして活動する応募者もいる中、木村さんの演奏が同氏の目に留まり、堂々のグランプリを獲得した。
勝因は、高難度の技巧を随所にちりばめながら、それを軽々と弾きこなすテクニック。相手の演奏とのバランス、掛け合いを考えながら、「難しいフレーズを流れの中で自然に盛り込み、『おっ』と思わせたかった。狙った部分をヌーノが評価してくれたのはありがたい」と木村さん。
前回「ヌーノに挑戦!」が行われたのは15年前のことで、自身が初めて買った同誌はその企画掲載号だった。「それに応募できるような人たちなんて、雲の上の存在だった」と木村さんは振り返る。しかしその時の結果は〝グランプリ該当なし〟。「ヌーノは自分が審査する以上、妥協しない人。彼が考える基準を満たし、その目にかなったということがうれしい」と受賞を冷静に受け止めつつ、喜びをかみしめる。
最近では製菓衛生師の資格も取得した。仕事に励みながら音楽活動を続け、評価を得るということは、「地方にいても、プロにならなくても結果は出せる」という成功体験を示すことであるといい、「地元で音楽をする人たちや中高生の励みになれば」と木村さんは願っている。