中村さん(小泉木工所)が県卓越技能者に、組子の優れた技能評価/気仙から唯一
平成28年12月4日付 7面
県はこのほど、盛岡市で平成28年度の卓越技能者表彰式を行った。県内最高水準の技能を有し、他の模範となる技術者を顕彰するもので、本年度は9職種9人、気仙からは陸前高田市竹駒町にある小泉木工所代表の中村多一さん(57)=小友町出身=が選ばれた。中村さんは、木製建具製造工として長年培ってきた組子の技能が高い評価を受け、気仙で唯一の被表彰者となった。
色や組み方にも創意工夫
小さいころから木工製作が好きだったという中村さんは、中学校卒業後の昭和50年、小泉木工所前代表の小泉勉さん(今年7月に逝去)へ弟子入り。国の「現代の名工」にも選ばれた小泉さんのもとに住み込みで働き、仕事が終わったあとに趣味で組子の研究を始めたという。
組子とは、クギを使わずに木と木を組み合わせ、「麻の葉」や「亀甲」などさまざまな模様を表現する伝統技術のこと。障子や欄間、書院などの建具に使われ、綿密に構成された細かな組子は芸術作品と呼べる。
その精度は1000分の1㍉単位とも言われ、木と木の間には紙一枚挟む隙間もない。製作には熟練の技が必要なうえ、どんな組み方をするかやその技法は、職人の腕の見せどころとなる。
中村さんは優れた技能を持つだけでなく、材料の削り方や組み方を変えたり、色合いの違う木を使うといった工夫を施し、多種多様な表現を可能に。本県でもその技はトップレベルにあり、平成12年には職人の技能全国一を競う「技能グランプリ」で金賞を獲得したほか、組子びょうぶの超大作「南部片富士に石割桜」を製作するなど、この道で名をはせる。
弟子入りした当初からこれまで、全国のさまざまな建築や優れた職人たちの作品を見てまねしたりと、研究に余念がなかった中村さん。「一般的な住宅の仕事をするほうがいい。組子は時間ばかりかかって利益が出ない」と笑うが、気の遠くなるような根気のいる作業も「やっぱり好きだから」と続けてこられた。
最近では和室を設ける家が少なくなったこともあり、組子を使った照明器具、ついたてなども考案。注文に製作が追いつかないほどだ。中村さんが「欄間や障子がなくても、こういうものを作れば組子を取り入れることができるかなと思って」と話す背景には、伝統と技術を途絶えさせたくないという思いも。
同木工所には後継者がなく、中村さんの持つ技を受け継いでくれる若手がいない状態。しかし中村さんは現在、宮城県女川町のギター工房に気仙大工の技術を提供していることもあり、「ギター学校に通う若い人などが、ギターを通じて木工に興味を持ってくれたら。そこから組子の世界にも入ってきてほしい」と期待を寄せている。






