よみがえった津波石、吉浜の保存会による周辺整備工事完了/大船渡(別写真あり)

▲ 震災で再発見され、整備工事を終えた昭和三陸大津波の記念碑「津波石」=三陸町吉浜

 5年9カ月前の東日本大震災後、大船渡市三陸町の吉浜海岸付近で見つかった昭和三陸大津波の記念碑「津波石」。同町吉浜の津波石保存会(新沼秀人会長)を中心に行ってきた整備工事がこのほど完了し、石が再び地上によみがえった。周辺には解説看板をはじめ、休憩スペース、津波到達表示板なども設置。見学しやすい環境が整い、今後は地域を襲った二つの大津波の記憶と教訓を伝えていく。

 

記憶と教訓を伝える

 

 津波石は、昭和8年の三陸大津波で海岸に打ち上げられた自然石。巨大な花こう岩で、高さは2・1㍍、長さは3・65㍍、幅は2・75㍍。重さは約32㌧ある。
 石には、「津波記念石 前方約二百米突吉浜川河口二アリタル石ナルカ 昭和八年三月三日ノ津波二際シ打上ゲラレタルモノナリ 重量八千貫」と印刻。地域住民らに津波の威力と恐ろしさを伝えていたが、同50年代に行われた道路工事で地中に埋没した。
 その姿が再び人々の目に触れるきっかけとなったのが、震災の大津波。平成23年6月、地域住民らが津波で決壊した市道ののり面から、津波石の一部を発見。その後、周囲を覆う土を取り除いていた。
 吉浜地区では津波石を保存し、次世代へ伝えていこうと、地区公民館と九つの部落会で保存会を結成。先月上旬から、本格的な整備工事に入った。
 工事では、津波石を地表面と同じ高さまで上げ、その周辺を車いすも利用できるようコンクリートで舗装。解説看板、石製のテーブル2台、ベンチ8台も据えた。看板では碑文を紹介し、「保存と津波の威力を多くの人達に伝えるため掘り出されたものである」と記した。
 付近には、旧防潮堤の高さ(約7㍍)と、震災の津波到達点(13・8㍍)の表示板も設置している。
 津波石の整備と表示板設置は、市の補助を活用。看板や休憩スペースの整備は、地域で費用を捻出し、県外からの寄付金も充てたという。
 工事は、今月7日に完了。10日には新沼会長(64)や下通部落会の木川田準一会長(68)が現地に足を運び、よみがえった津波石に対し、二つの災害を広く後世へ伝えてくれるよう願いを込めた。
 木川田会長は「この石が、約80年前にあった津波の破壊力を物語っている」と話し、津波の記憶風化を防ぐものとなるよう期待。新沼会長は「実際に来てもらい、防災意識を高めてもらいたい」と話していた。