陸前高田再生支援研究P、6年目の仮設住宅団地調査

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 法政、明治、工学院、帝京、東京など各大学の教員、学生らによる陸前高田地域再生支援研究プロジェクトは、今年8月に陸前高田市と住田町計49カ所の仮設住宅団地で行った調査報告の概要版をまとめた。学生たちは入居から6年目を迎えた中での転出・転入状況や自治会活動などに関し、聞き取り調査を実施。被災地全体をみれば住宅再建は佳境に入ったと言える半面、地区によって進ちょく状況の差が大きく、各種団体が個別に出向いていく寄り添い型支援の重要性が浮かび上がる。


 同プロジェクトは各大学の建築・都市計画、国土計画、社会福祉などの研究者らが相互に協力・補完しながら支援活動を展開。調査は6年連続で、今回は8月4~9日、19~22日までの2期に分け、各大学の教員、学生ら延べ約60人が参加した。陸前高田市内46カ所、住田町内3カ所の計49カ所の仮設住宅団地を訪ねた。
 各自治会長らに事前に了解を得た上で▽仮設住宅における転出・転入▽住環境や周辺環境上の問題と対応▽自治会活動の状況▽外部支援団体▽仮設住宅の再編▽住宅再建・復興まちづくり――などの各状況をインタビュー調査した。
 また、3年ぶりに現在の暮らしに関する状況や住まいの意向などを聞くアンケート調査を実施。配布数は866件で、回収数は334件(38・6%)だった。
 同チームがまとめた速報版=別表参照=によると、仮設住宅の暮らしは「安心できる」と答えた割合は半数に上った。一方で、周囲への配慮や、高齢者や子どもにとっての生活環境については「暮らしにくい」との意見が過半数を占めた。
 ストレスに関しては、暮らしの長期化を挙げる回答が3分の2を占めた。健康不安や交通の便が悪いといった項目も4割近くに達した。今後の暮らしでの不安は健康、経済面での回答が多かった。
 「仮設住宅を転出する場合、どのような基準で次の仮設住宅を選ぶか」(三つまで回答可)との問いでは▽買い物、通院のしやすさ40%▽仕事上の利便性28%▽住宅タイプ、住宅性能26%▽交流関係25%▽現在の仮設住宅の周辺地域である24%──が続いた。転居での不安(同)では「近所づきあい」「居住期限」が4割を超え、以下「精神的ストレス」「仕事や買い物の利便性」などが続いた。
 また「地域の復興や生活再建について、住民参加は十分だと思うか」に対して「十分である」「ある程度十分である」と答えた割合は計41%にとどまった。
 今後の復興まちづくりにおいて重要だと思うこと(同)を尋ねたところ、最多は「まちづくりについての住民と行政の協議の促進」で37%。「まちづくりについての情報提供の充実」が32%と続き、「住民による新しい地域づくりについての話し合いの場」と「地域の復興を担う人材の育成」はともに28%だった。
 陸前高田市内における8月末時点での入居状況(県復興局生活再建課まとめ)では、供給戸数2080戸に対して入居戸数が1020戸(49%)と、半数を下回った。一方で、同プロジェクト研究代表の宮城孝法政大学現代福祉学部教授(59)は「阪神・淡路大震災では5年ですべての仮設住宅がなくなった。6年以上に及ぶのは、過去の災害にはない状況」と指摘する。
 町別にみると、今泉地区で被災した住民が多く暮らす竹駒地区で居住率が依然高い半面、防災集団移転促進事業や災害公営住宅整備が完了した広田町などでは低くなっている。
 今回の調査では、今後の相談相手として「同じ仮設住宅に住む友人・知人」とする割合が減少する一方、社会福祉協議会の生活支援相談員や行政に対する期待が高まる傾向も明らかに。住宅再建まで今後数年待たなければいけない被災者もいる中、調査では仮設団地内における信頼関係や、安心・安全確保のあり方を問いかける。
 宮城教授は「支援者サイドでは、個別に出向いていく形の支援強化が重要では。行政や支援にかかわる団体が連携し『決して見捨てていない』とのメッセージを含めた寄り添い型支援を図る必要もある」と話す。A4判35㌻による調査版冊子と、A3二つ折りにまとめた意向調査速報版は、各団地や行政機関などに配布した。