2016気仙この1年/記者の取材ノートより⑨【事件・事故】

▲ 現場検証が行われた大船渡市三陸町綾里・野形地区の住宅火災現場

綾里で火災相次ぐ
大船渡で殺人未遂事件も

 

今もなお〝厳戒体制〟続く/野形の連続火災

 

 大船渡市三陸町綾里の野形地区で、住宅を全焼する火災が5、10月に合わせて3件発生した。昨年12月末の作業小屋と空き家を焼く火災も合わせた4件の発生現場は、半径60㍍以内に集中。不審火も疑われ、近隣住民の間には不安と動揺が広がった。
 4件の火災は、いずれも午後8、9時台に発生。最初の2件は空き家だったが、10月に発生した2件は人が住んでいる家で、いずれも物置の燃え方が激しいことが共通している。
 同地区では、警察、消防、防犯協会、部落会らが夜回りを行うなど、二度と火災を発生させまいという〝厳戒態勢〟が今も続く。
 また、12月7日に同町越喜来で発生した火災では、燃えた範囲はごくわずかだったものの、50代男性が亡くなった。
 このほか、住田町世田米、三陸町綾里、盛町で住宅の全焼火災が起こった。
 大船渡地区、陸前高田市の両消防組合によると、本年の気仙管内で発生した火災件数は27日現在で、22件。前年に比べて5件多い。


人身は昭和34年以降で最少/交通事故情勢

 

 大船渡署管内では、1月に陸前高田市小友町で、2月に大船渡市日頃市町で交通死亡事故が発生した。
 県内では、3度にわたって交通死亡事故多発警報が出されるなど、死亡事故が頻発したが、同署管内では、2月の事故以降、死亡事故ゼロが続いている。
 今年の人身事故件数は、27日現在で73件と、昭和34年以降で最少を記録した前年をさらに下回るペースで推移している。
 また、物損事故や死傷者数も、前年同期よりも減少傾向が続いている。
 ただ、10、12月に、道路横断中の歩行者がはねられ、意識不明の重体となる事故が大船渡市内で発生した。
 復興工事の進展で、めまぐるしく交通の流れが変わる中にあって、予断を許さない状況が続いている。


住田町世田米で母娘が死亡/無理心中か

 

 11月15日、住田町世田米地内の住宅で母娘2人が死亡しているのが見つかった。
 亡くなったのは、83歳の母親と62歳の長女。司法解剖の結果、死因は2人とも出血性ショックと判明した。
 警察には、捜査本部が設けられず、無理心中も視野に入れた捜査が進められた。
 12月6日には、県立大船渡病院内で、女性看護師(60)が男に刃物で背中を刺される事件が発生した。
 この事件で、大船渡市大船渡町に住む49歳の無職男性が、殺人未遂容疑で現行犯逮捕された。
 現場は、診療棟近くの廊下。普段から外来患者のため、午前7時ごろには玄関を解錠しているといい、この日も誰でも入れる状況だった。
 容疑者の男は、すぐに取り押さえられ、駆けつけた大船渡署員に引き渡されたが、外来診療が始まる15分ほど前の犯行に、病院内に衝撃が走った。


詐欺の認知件数が激増/前年比3倍に

 

 社会問題となっている特殊詐欺事件は、大船渡署管内の認知件数が27日現在で6件と、前年同期(2件)の3倍に激増した。
 内訳は、全国的に急増している還付金詐欺のほか、インターネット利用料金の未払いなどをかたった架空請求詐欺など。
 同署には、振り込め詐欺などの予兆電話・メールを受けた住民からの相談も相次いでいるという。
 また、被害総額は同署管内だけで約1200万円にのぼることや、20~70代の幅広い年齢層が被害を受けていることもあり、同署では「不審な電話やメールが来たら、まずは落ち着いて家族や警察に相談を」と注意喚起に力を入れている。
 (文中の年齢、肩書などは当時のもの)