陸前高田へ「お試し移住」、名古屋市の大学生が約1カ月間
平成29年1月11日付 7面
三陸地方へのIターンを促進する「東北あいターン」事業を活用し、愛知県名古屋市の酒井優理さん(22)=名城大学4年=が陸前高田に約1カ月間「お試し移住」する。酒井さんは11日から、同市気仙町の水産加工会社㈱加和喜フーズ(川村賢壽社長)岩手営業所でアルバイトしながら、同市の住み心地なども外部へ発信していく。
水産加工会社に勤務、〝住み心地〟発信も
東北あいターンは、宮城県登米市で人材派遣などを手がける㈱ガイアサイン宮城支社(渕上智信社長)による事業。東日本大震災で大きな被害を受けた同市と南三陸町、気仙沼市、陸前高田市で実施され、若い人たちが現地で働くことにより、地域の復興にも貢献する取り組みとなっている。
陸前高田では昨年から、市商工観光課が市内事業所に受け入れを呼びかけ。酒井さんが今回、お試し移住者第1号となった。酒井さんは昨夏にも同事業を利用し、南三陸町に2カ月間滞在。震災後、よさこいグループの活動で何度も訪れたことがある陸前高田でも、生活体験をしてみたいと考え応募したのだという。
「外からは『被災地』と見られてしまうけれど、『当たり前の暮らし』を送る場所として、一度滞在したかった」と酒井さん。10日には加和喜フーズでの作業内容などについて説明を受けたあと、従業員宿舎へ荷物を運び入れた。
春からは名古屋市内での就職が決まっているが、「よさこいの仲間や外部の人にも、SNSなどでこちらの生活について発信できたら」と語る。
よさこい活動を通じて仲良くなった同市米崎町の女性からも、「遊びにおいで」と声をかけられているといい、新しい友達づくりにも期待する酒井さん。余暇には一本松や箱根山といった観光地だけでない陸前高田を知りたいと意気込む。
滞在中の費用は応募者の自己負担となるが、生活費と食費、雑費で1カ月あたり数万円程度で済むといい、酒井さんは「住居などは用意してもらえ、身一つで参加できるので楽なんです」とその魅力を語る。
市商工観光課企業支援係の望月孝係長(38)は、「こうした気軽なお試し移住をきっかけに、交流人口の増加、本格的な移住の拡大に結び付けていけたら」と話し、今後も同事業を活用していきたいという考えを示した。
加和喜フーズの製造会社にあたる㈱かわむらの菅野清志課長(40)も、「陸前高田について知ってもらうのは、うちだけでなくほかの企業にとっても、市全体にとっても良いこと。ここからいい影響が広がってほしい」といい、酒井さんの挑戦を歓迎した。