復興願い「福」届けたい、鈴木さん(大船渡一中出身)が「一番福」 /兵庫・西宮神社の開門神事で
平成29年1月13日付 7面

兵庫県西宮市の西宮神社で毎年1月10日に行われ、本殿への参拝一番乗りを競う「開門神事福男選び」。全国的に知られる年頭の行事で、約5000人が参加した今年の「一番福」に輝いたのは、大船渡市立第一中学校出身で専修大学3年の鈴木隆司さん(21)=神奈川県川崎市在住。中学時代に東日本大震災を経験しており、「復興に向かう大船渡や沿岸の皆さんにも福を届けられたら」と話している。
約5千人参加
商売繁盛の神、えびす様をまつる神社の総本社として知られる西宮神社。1月9日から11日までの3日間行われる「十日えびす」は、約100万人の参拝者でにぎわう。江戸時代から自然発生的に始まったとされる「開門神事福男選び」は、10日の大祭後に行われる。
午前6時に表大門が開かれると、参拝者がおよそ230㍍先にある本殿の一番乗りをかけて全力疾走する。昭和15年ごろから、本殿へ到着した順に1番から3番までの人が「福男」として認定されるようになったといい、現在は数千人規模の参加があり、全国的な知名度を持つ行事となっている。
今年の「一番福」を勝ち取った鈴木さんは、花巻市生まれ。父親の転勤で久慈市や盛岡市など県内を移り住み、中学校の3年間を大船渡市で過ごし、俊足を生かしてサッカー部や特設の陸上部で活躍した。卒業後は北上市の専修大学北上高校に進み、現在は同大経済学部で学んでいる。
開門神事には、「毎年ニュースで福男選びを見ていて、学生のうちに挑戦してみたいと思っていた」と初めて参加。川崎市から西宮市まで列車で8時間かけて移動。その足で神社に向かってスタートを待った。
神社では混乱を防ぐべく、事前のくじ引きでスタート時の場所割りを決めており、鈴木さんは108人の先頭グループに入り、さらに最前列中央という位置取りも得る幸運ぶりを発揮。開門後間もなく先頭に躍り出し、そのままゴールへ飛び込んだ。
一番福の認定証とともに、えびす様の木像、はっぴなどを贈られた。コースの下見の時間はほとんどとらず、「ほぼ無の状態で走り続けた。一番福になれるとは思ってもおらず、うれしいの一言」と振り返る。
中学3年だった平成23年の東日本大震災津波では、盛町にあった自宅が浸水し、避難所暮らしも経験。福男選び当日、関西からの支援に感謝をと、釜石市からやってきた親子がスタッフとして手伝っているのも目にし、「周囲の人に福を届けるのが一番福。復興に向かう沿岸に福を届けられたら」との気持ちを強める。
将来の夢は飛行機パイロット。「残った福でかなえられたら」とはにかむ。「大船渡の友人からもたくさんのメッセージをもらっている。去年の成人式以来、足を運べていないが、機会を見つけて報告に行きたい」という。