市当局と議員交えて協議、新市庁舎位置選定で広田地区住民が「語る会」(動画、別写真あり)
平成29年1月13日付 1面

陸前高田市の広田地区コミュニティ推進協議会(齊藤篤志会長)は11日、広田小学校で「新市庁舎再建について語る会」を開いた。戸羽太市長をはじめ市当局側から説明を受けたうえで、参加住民たちが庁舎建設位置について率直に意見交換。同町在住の市議会議員も出席し、この日出された意見や住民の思いをもとに、市との議論を重ねていくとした。
昨年11月、市当局は新市役所の庁舎建設位置について、①高田町の農免道沿い②現仮設庁舎位置③現高田小の改築、または新築──という3カ所4候補を提案。戸羽市長は「住民アンケートや説明会は行わず、議会での議論によって決定したい」という見解を示すと同時に、「要望のあるところへは出向いて、幅広く話を聞きたい」と述べ、昨年から今年にかけ、各地で「市長と語る会」を開いている。
今回はこの「語る会」と併せた、住民同士の議論の場として設定され、公民館長らを中心に78人が出席。同町在住の伊勢純、蒲生哲、三井俊介の3議員も参加し、会の進行役を務めた。会ではまず当局側から、候補地それぞれのメリット、デメリット、概算事業費などが説明された。
出席者は4候補それぞれについて、安全性や費用、住民への負担など、さまざまな角度から質問し、市長や担当部課長らが回答。このやりとりを踏まえたうえ、居住地区ごとの8グループに分かれ、4案の「良い点・悪い点」を検討していった。
案①については、「場所が不便」という点でほぼ一致。土砂災害の危険性を指摘する人も多く、「津波の次にがけ崩れ、となったらたまらない」「冬季の道路凍結も心配」と、安全性を疑問視する声が上がった。②については「消防署やコミュニティホールが近く、便利」「津波の心配もない」という部分を「良い点」に上げる人が多かった。
他の「語る会」でも議論の中心となり、広田地区でも大きく意見が分かれたのは、現高田小を利用するという案③。③を推した班は、土地のかさ上げと防潮堤の完成、避難路の確保といった多重防災、「住民の避難意識を信じる」という前提に立ち、「高齢化を見すえると、利便性の高さは重要」と賛成理由を挙げた。
他方、「浸水域にある案③は、はなから論外」とするグループも。「いざ津波が来たとき、市役所は『みんなここへ逃げてこい』と言える場所でなくては」とし、「わずかでも被災の不安が感じられる土地は避けるべき」という主張も強く語られた。
この日は一つの〝結論〟に達することはなかったものの、①案について「農免道より下で、浸水区域を避けた場所」として高田町和野地区近辺で土地を求める提案があったほか、②案の「駐車場が少ない」「改めて仮設庁舎を建てる費用がムダ」という〝マイナス面〟についても、「庁舎建設中は高田小を仮庁舎にしては」といった対案が挙げられるなど、住民が建設的に意見を出す姿が見られた。
三井議員(28)は「『この場ではこんな意見が多かったので、これが広田の総意です』として議会へ持っていく気はない。市とは今月にも話し合いが持たれる。3議員とも今回伺った話を参考にし、3月までの間に議論を深めていく」と述べた。
参加者は「新庁舎について市から直接話を聞ける機会は、これで最後だろう。言いたいことをちゃんと言っておかないとと思って来た」「浸水域に対する考え方はみんな違うということを踏まえ、あとは議員さんたちに話し合ってもらいたい」などと語り、この日出された多様な意見が、議会での議論に生かされることを願った。