3月閉鎖へ一部撤去進む、仮設商店街「地の森八軒街」/大船渡

▲ 3月で閉鎖する仮設商店街「地の森八軒街」。2棟のうち1棟の撤去作業が行われた=大船渡市大船渡町

 3月での閉鎖が決まっている大船渡市大船渡町の仮設商店街「地の森八軒街」で先週末、2棟のうち1棟の撤去作業が始まった。東日本大震災前は大船渡駅周辺とともに同町における商業の集積地となっていた地ノ森地域で身を寄せ合い、地域住民の買い物利便確保も含め復興への明かりをともし続けてきた店主たち。それぞれの行き先に向かっているが、5年余にわたり培ってきた商店街としてのきずなや支援者とのつながりを大切にしていきたいとしている。
 地の森八軒街は震災から9カ月後の平成23年12月、同地域内で営業していた店が集まり、独立行政法人中小企業基盤整備機構による無償貸与制度を活用してオープン。民有地に設けられた木造平屋建ての2棟それぞれ4店舗ずつに、スポーツ店、クリーニング店、写真店、包装用品販売、鮮魚・青果店、手芸店、和菓子店、たばこ・食料品店が入った。
 旧県立病院跡地や大船渡北小など、近隣地域に大規模仮設住宅団地が生まれ、買い物環境の充実を望む声が高まっていた中での営業再開で、月例イベントも開くなどしながらにぎわいづくりに努めてきた。
 仮設商店街としての開設期限は3月まで。これまでに従前地や付近、別の仮設商店街への移転、または閉店を決めたところもあり、2棟のうち1棟の撤去が進んでいる。
 残る1棟で3月まで営業するのは、包装用品のタツヨシ(佐々木義智さん経営)と、チダスポーツ(千田仁さん経営)の2店。  タツヨシは昭和31年に創業。当初は現在の県道沿いに構えていたが、同35年のチリ地震津波後に地ノ森に移り、東日本大震災で八軒街の一員となった。八軒街近くに新しい事務所を設け、3月中に移転する予定だ。
 佐々木さんは「がれきに埋もれた時、がれきが片付いたあとをはじめ、これまでいろいろな判断を迫られてきた。5年は長かった気がする」と振り返る。
 地ノ森地域の浸水した土地は民間利用が主体。市による復興まちづくりが進む大船渡駅周辺と違い、将来像はなかなか見えてこないのが現状。こうした状況を踏まえ、佐々木さんは「地域の皆さんの買い物利便を考えると、仮設店舗の役割を終えたと言い切っていいだろうかとの思いもある」と語る。
 一方のチダスポーツは、昭和52年、30歳だった千田さんが水産加工会社から「脱サラ」して創業。県道丸森権現堂線沿いに構え、子どもからお年寄りまでスポーツ愛好者に親しまれてきた。「仮設店舗は当初3年の予定が5年になり、過ぎてしまえば短く感じる。後ろ髪を引かれる思いだが、店はここで幕引きにしようかと考えている」とする。
 八軒街の初代代表として立ち上げをけん引してきた。「八軒街の仲間に恵まれ、ボランティアの皆さんの応援がなければ、やってこれなかった。近く解散式も予定しているが、ここで培ったものは、いつまでも大切にしていきたい」と語る。