苗木の自然再生を確認、奇跡の一本松そばで7本見つかる/陸前高田(動画、別写真あり)

▲ 奇跡の一本松のそば、しおさい橋のたもとで見つかったマツ

 大自然による破壊の威力は、人智のおよばぬ恐ろしいものであるが、その再生力もまた、想像を超えてたくましい──そのことを実感させるニュースが飛び込んできた。大津波で、およそ7万本あったとされるマツが流失した陸前高田市の高田松原地区で18日、自然再生したマツの苗木が確認された。同市のシンボル「奇跡の一本松」のそばに生えており、市は今後の取り扱い方を検討していく。

 

高田松原の由来マツか

 

 この苗木を発見したのは、同市米崎町の及川征喜さん(72)。高田松原周辺などの植物調査を個人的に行っている及川さんは今月8日、一本松の手前にある「しおさい橋」を歩いていた際、立ち入り禁止区域内に緑色の松葉を見つけたという。
 及川さんはすぐ、一帯を管理する市街地整備課へ発見を申し出。18日に同課や農林課の職員らと現地を訪れ、古川沼を渡るしおさい橋のたもとに「アカマツ」とみられる苗7本を発見した。
 平成23年3月に発生した東日本大震災津波で、高田松原は壊滅。松林があった場所では当初〝生き残り〟のマツが数本確認されたが、手当てもむなしくすぐ立ち枯れてしまった。唯一の希望をつないだ「一本松」も同年秋に枯死。一度伐採されたあと、モニュメントとして元の場所へ戻された。
 かつてのような松林の復活を目指す中では、同市のNPO法人・高田松原を守る会(鈴木善久理事長)が、苗木管理、植栽などに取り組む。同会は震災直後にも松原で新しいマツの芽吹きを確認し、それらを小友町の畑など、別の場所へ移植して育てている。
 一方、放置された状態でマツの生育が確認されたのはこれが初めてとなる。発見場所は高田松原津波復興祈念公園として整備されるエリア。今後は橋の修復をはじめ、県による工事が行われる予定であることから、見つかったマツ苗をどうするかは県との調整を待つ。
 市は「新しい松原に移植するという手もあるだろうし、工事に支障がないようならこのまま残してもいいかもしれない」と説明。
 かさ上げの土と一緒にどこかから運ばれた種なのか、もともと高田松原にあった木から飛んだ種なのかは分からないが、「縁あってここに生え、ここで育っているのだから『高田松原のマツ』と言っていいのではないか」という。
 見つかった苗木の樹齢はバラバラで、およそ1年から4年。震災発生以降、ずっと孤独に立っていると思われていた一本松のそばに、少なくとも4年前から〝仲間〟がいたということになる。まるで一本松が次々となした〝7人の子ども〟のようでもある。
 及川さんも「津波で全滅した場所だったところに力強く芽を出し、自然に増えてきてくれたマツ。市民にとっても大きな希望となるはず。大事にしていってもらいたい」と喜び、改めて自然が持つ再生の力に舌を巻いていた。