〝教訓の伝承〟高く評価、陸前高田・桜ラインがグランプリ/国土交通省の「手づくり郷土賞」

▲ 全国から集まった出席者の前で、桜ラインの活動内容をプレゼン=東京都

 東日本大震災による大津波の被害を後世に伝えようと活動している陸前高田市の認定NPO法人・桜ライン311(岡本翔馬代表理事)が、国土交通省主催の平成28年度「手づくり郷土賞」の一般部門でグランプリに輝いた。同法人の活動は、津波の到達点にサクラを植えて桜並木をつくり、津波から避難する際の目安として後世の人々に活用してもらおうというもの。「津波はここまで到達した」という教訓を、目に見える形で次世代に伝承しようとの試みが高く評価されての選出となった。
 桜ライン311は平成23年10月、任意団体として発足した。以来、春と秋の年2回植樹会を開催し、市内の約170㌔にわたる津波到達ラインに10㍍間隔でサクラの木を植樹。これまでに3510人が全国各地から参加し、228カ所に計1088本の苗木を植えてきている。
 今回、桜ラインがグランプリに輝いた「手づくり郷土賞」は、昭和61年度に創設された国土交通大臣表彰。本年度で31回目の開催で、地域資源を積極的に活用し、個性的で魅力ある地域づくりを行っている団体の活動を表彰している。
 併せて、これらの好事例を広く紹介することにより、各地の取り組みをいっそう推進させることも狙いとした。
 募集は一般と大賞の2部門で、このうち一般部門には39件の応募があった。学識者などで構成される選定委員会が審査した結果、桜ラインの活動を含む20件が同賞を受賞。今月22日には、受賞した活動の当事者たちによる発表会が東京都内で開かれた。
 発表会でのプレゼンテーションを踏まえて同委員会が審議を行い、桜ラインと宮崎県の「天下一ひむか桜の会」をグランプリに選出。プレゼンを担当した桜ラインの伊勢友紀さん(32)は、「うれしいの一言。発表会の前、地権者さんのところを回った時にかけてもらった言葉を思い出しながらプレゼンした。全国の方に評価してもらえる活動をしていると改めて再認識できた」と喜びを語る。
 プレゼンでは、陸前高田の被災状況や、植樹予定地が分かる地図、伝承の輪が広がっていることなどを紹介。最後は植樹会に参加している子どもたちの写真を映し出し、この活動が明るい未来へつながっていることを表現した。
 また、伊勢さんが思いを込めて言った「私たちは、悔しいんです」というフレーズは、発表会後の交流会で「印象的だった」との声が寄せられるほど、聴衆にインパクトを与えた。
 「『手づくり郷土賞』なので、地域の人々と一緒に、外の人々とも結びつくような活動にしていきたい」と伊勢さん。今年の春の植樹会は、3月18(土)、25(土)の両日に行われる予定となっており、今回は地元住民の参加申し込みが多いという。「少しずつ地域に根ざした活動に近づいているのでは」と笑顔を見せていた。