気仙川の治水対策・県が昭和橋の架け替え計画前倒し、昨夏の台風被害教訓に/住田町

▲ 80年以上にわたり住民らの移動を支え続ける昭和橋=世田米

 県大船渡土木センター住田整備事務所と住田町による「昭和橋の治水対策に関する意見交換会」は25、26の両日夜、町役場で開かれた。これまで、昭和橋の架け替えは平成36年度からの着手方針だったが、岩泉町などで甚大な被害をもたらした昨年8月の台風10号をふまえ、同事務所側は早ければ29年度から調査・設計に入りたい意向を示した。防災や交通機能、古き良きまちなみを生かす景観など、多方面から新しい橋のあり方が注目される。

 

昭和橋「優先的に」、気仙川の治水対策

 

 昭和橋は昭和8年に架設。橋の長さは72・9㍍で、交通可能な道幅は3・2㍍。一般車両同士のすれ違いができない狭さとなっている。一方で町中心部に立地し、登下校の子どもたちをはじめ一定の歩行利用や車両通行があるほか、周囲の蔵並みと調和した「古里らしさ」を感じさせる風景を形成している。
 25日の意見交換会は地元の曙、愛宕地域の両住民が対象。26日は町内全域とし、それぞれ10人余りが出席した。河川改修を担う整備事務所からは北村安所長、橋を管理する町からは熊谷公男建設課長らが臨んだ。
 整備事務所側では、昨年8月末に襲った台風10号による岩泉町の被災状況を説明。流木による橋の閉塞状況などを示した。
 昭和橋の架け替えが必要な理由には▽基準径間長の不足▽橋げたの余裕高不足──を挙げた。径間長とは、橋台(橋脚)と橋脚との間隔を指す。昭和橋は現在7本の橋脚があり、基準径間長は9・1㍍となっている。
 想定洪水流量からの計算では、26・3㍍以上が必要。現状では木などが橋に引っかかりやすく、川の水をせき止めることで、付近の家屋や事業所などへの浸水被害が懸念される。また、橋げたも現状より2㍍程度高くすることで、増水に備える必要性がある。
 架け替えでは、橋脚は中央部の1本のみとし、必要な径間長を確保。機能補償整備のため、幅員は現在の橋と変更はない。転落を防止する柵の形状や橋に用いるコンクリートの明度(色)、照明灯など附属物のデザインは景観に調和するよう検討するとしている。
 整備スケジュールに関しては、台風10号の教訓をふまえ「橋の架け替えは優先的に進めなければいけない」と説明。計画を前倒しし、早ければ29年度から調査・設計に入りたい考えを示した。
 25日の説明会では、住民から「車がすれ違うことができ、歩道がある形での整備を誰もが望んでいる」といった意見が出た。これに対して整備事務所側は、接続道路の理由などから現位置での拡幅新設は難しいとの見方を示した。
 現位置、現道幅での架け替え整備に要する県の事業費は、概算で約4億7000万円と見込まれている。幅員を広げた橋の整備には、用地確保に加え町も整備費を負担しなければならない。26日は近隣に新築整備される消防分署から出動しやすい形での整備を望む声が出たほか、景観やまちづくりの観点も話題に上った。
 今後の見通しに関する質問に対し、熊谷課長は「この意見交換会をスタートとし、さまざまな観点から検討していくことになる」と説明。北村所長も「住田町が考える道路ネットワーク、交通安全などの計画にすりあわせた形での整備は可能。昭和橋は景観的にもすばらしい橋である。架け替えの賛同を得られれば、町の考えを尊重した形で対応していきたい」と述べた。
 県は平成26年7月、気仙川、大股川の洪水対策としていた津付ダム事業の中止を決定。河川改修中心の新たな治水対策によって、35年度末までに治水安全度30分の1(30年に一度発生する規模の大雨、洪水に対する安全)を確保する計画をまとめた。
 その後は将来目標である安全度70分の1の整備を段階的に行う方針で、昭和橋の架け替えは当初、36年度からの着手としていた。前倒しの整備でも、安全度70分の1に対応した構造となる。