結束の日々忘れない、仮設商店街「地の森八軒街」/大船渡

▲ 慰労会に出席した地の森八軒街の関係者たち。仮設商店街としてともに歩んだ5年余を振り返った=まるしちザ・プレイス

 3月で閉鎖する大船渡市大船渡町の仮設商店街「地の森八軒街」の商店主らは27日夜、同町のまるしちザ・プレイスで慰労会を開いた。地ノ森地域などで津波を受けた八つの店舗が集まり、平成23年12月にオープン。各自のなりわい再建だけでなく、地域の買い物利便向上やにぎわいづくりにも力を合わせてきた。設置期限の3月末を前に移転や廃業などそれぞれの行き先が決まっており、この日の慰労会を解散式とも位置付け、5年余を振り返りながら変わらぬ親交を誓い合った。

 

3月に閉鎖、店主ら慰労会

 

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独自イベント「ふれあい月市」も開催するなど地域のにぎわいづくりに努めた(写真は平成25年の初開催時)

 店主とその家族、八軒街近隣にあり、ともに歩んできたカトリック大船渡教会と、活動拠点「いこいの家」を置くカリタスジャパンの代表ら合わせて21人が出席。
 八軒街の初代代表で「チダスポーツ」を営む千田仁さん(69)が、「振り返ればこの5年余が1週間ほどに感じる。新しい店をつくったり休業したりと、行き先はさまざまになるが、これからも頑張っていこう」とあいさつした。
 出席者には「起承転結」と銘打った開設からの道のりを振り返る小冊子が贈られ、これも開きながら話に花を咲かせ、閉鎖後も変わらぬ付き合いをと声を掛け合った。
 八軒街は独立行政法人中小企業基盤整備機構による無償貸与制度を活用して開設。約300坪の民有地に1棟あたり4店舗が入る木造平屋の2棟が建ち、スポーツ店、クリーニング店、写真店、包装用品販売、鮮魚・青果店、手芸店、和菓子店、たばこ・食料品店が営業を再開。
 近くの県立病院跡地に大規模な仮設住宅団地が設けられた中、歩いて買い物に行ける場所として親しまれた。にぎわいづくりに向けて月例イベント「ふれあい月市」も開くなど、大船渡駅周辺とともに市の商業核を形成してきた地ノ森地域の復興に汗を流してきた。
 設置期限の3月末を前に、4店が本設店舗や他の仮設商店街に移転し、2店は閉店。1棟は昨年末までに空き棟となり今月に入って解体された。残る1棟で営業を続けているのは2店で、それぞれ行き先を固めている。
 解体された棟で営業してきた鮮魚・青果の「かねき」の谷地くみさん(60)は、「新しい店を構えるのは難しく、残念だけど廃業を決めた。皆が同じ気持ちで、商売やイベントをできたことがうれしかった」と振り返る。
 被災前と同じ場所で昨年から本設営業を再開した「都美多菓子店」の富田光也さん(42)は、「月例のイベント開催など、何もかもが初めての経験。楽しかったり忙しかったりだった。ボランティアの方々をはじめ市外とのつながりもできたので、大切にしていきたい」と語る。
 八軒街の近所に住み、イベントや雪かきなどを手伝ってきた会社員・栗村直樹さん(38)も慰労会に招かれた。「まだ周辺が真っ暗だったころから、明かりをともして頑張っている姿に勇気をもらった。八軒街の形はなくなっても、ずっと記憶に残ると思う」と話していた。