「新たな〝足音〟響かせる」、高田東中で新校舎竣工式/陸前高田(動画、別写真あり)

▲ 式典後、出席者に感謝の合唱を披露した生徒たち=米崎町

 陸前高田市の高田東中学校(吉田雄幸校長、生徒185人)の新校舎竣工式は29日、米崎町の同校体育館で開かれた。生徒たちは数々の支援に対する感謝の思いを込め、式典の締めくくりに校歌の合唱バージョンなどを披露。「尽きない恵みがつちかう今に 生かされてあるわたしたち」「歴史よ記憶よ やしないとなれ」といった歌詞にそれぞれの決意を重ね、新しい校舎に高らかな歌声を染み込ませた。

 

記念式典と内覧会も

 

 新校舎は一級建築士事務所㈱SALHAUSが設計監理、佐武・菱和経常建設共同企業体が施工。及常建設・山徳建設経常建設共同企業体が敷地造成工事を行った。
 鉄筋2階建て校舎棟の延べ床面積は4493平方㍍。このほかに体育館、武道場棟、屋外運動場、3面のテニスコートなどがある。工事は昨年10月に完了し、生徒たちは3学期から本格的に利用を開始した。
 この日は高い天井の体育館で竣工式が開かれ、全校生徒と教職員、来賓、市民らが出席。学校が統合する前の米崎中、小友中、広田中の元校長らも、新校舎完成祝賀と、生徒らのこれまでの研さんをたたえるため訪れた。
 式典では、戸羽太市長の式辞、山田市雄教育長の告辞のあと、地権者と工事関係者に感謝状を贈呈。来賓らも生徒たちの活躍に期待する言葉を祝辞として贈った。また、校歌作曲者の千住明さん、作詞者の覚和歌子さんからの祝電も披露された。
 吉田校長は、移転後に校庭でサッカーをする生徒らを見て「本来の生徒の姿が戻ってきたことに涙がこみあげてくる思いだった。来年度には、広い校庭で遊んだことのない生徒が入学してくる。のびのびと活動してくれることを願っている」などとあいさつし、震災後に不便を余儀なくされた生徒たちが、ようやく〝当たり前〟の学校生活を送れることを喜んだ。
 生徒会長の熊谷秀人君(2年)は、先輩たちが苦労しながらも築いてきた東中の伝統が、「確かな〝足音〟として旧校舎に響いていた」とし、「今度は私たちがこの校舎に足音を響かせる番。夢に向かって歩み続けるひたむきな足音、仲間とともに自分を磨く確かな足音、ふるさとの復興のため前へ進む力強い足音。それらが重なりあうとき、高田東中の伝統は受け継がれる」と述べた。

内覧会では、開放的で木のぬくもりあふれる空間に感嘆の声が上がった=米崎町

内覧会では、開放的で木のぬくもりあふれる空間に感嘆の声が上がった=米崎町

 式典後は、一般市民を対象とした校舎内覧会も実施。生徒集会や講演会の会場、地域交流の場などとして多目的に使用できる「絆ホール」をはじめ、間仕切りがなく開放的な図書室、鉄筋造ながら、天井や柱に用いられた気仙スギが温かみを演出する教室などを見学した人々からは、「美術館みたい」「こんな学校に通いたかった」といった声がもれた。
 震災前の平成21年から、震災後の24年まで小友中の校長を務めた加藤清さん(59)=一関市立磐井中校長=は、「前を向き、震災で亡くなった方々や先輩たちの思いを受け継いでいこうという、一人ひとりの力強い姿を頼もしく思った。高田東中が陸前高田の復興の象徴となり、子どもたちの頑張りが地域の方々も勇気づけていくだろう」と期待を寄せた。