今春からマツ植栽へ、高田松原の防潮林復旧

▲ 第二線堤の海側で、苗木植栽の基盤となる盛り土工事が進められている高田松原=陸前高田

 県が陸前高田市の高田松原で復旧を進める防潮林植栽エリアで現在、盛り土工事が盛んに行われている。敷地造成で使用する約27万立方㍍のうち、約20万立方㍍の運搬が済んだ。先人が築き上げた名勝地は、津波で「奇跡の一本松」のみを残し、約7万本のマツが失われた。3カ年計画の苗木植栽は今春から始まり、再生へいよいよスタートラインに立つ。

 

土壌の盛り土工事盛ん

 

 高田松原では、国、県、市によって砂浜・防潮林再生、防潮堤、津波復興祈念公園整備などの大規模事業が同時並行的に進められている。
 防潮林は、防潮堤の第一線堤と第二線堤の間に設ける。復旧面積は約12㌶で、管理用道路などを除いた植栽エリアは約8㌶。敷地内にはスギ材で作った高さ約1・6㍍の防風柵を設置し、マツ苗を浜風などから守る。
 工事は平成26年12月ごろから本格化。植栽地は、マツを末永く生育させるため、樹木の根が地下水に達しないよう盛り土を施す。水がたまらないよう中央部の高さが4・25㍍、両端部が3・6㍍となだらかな傾斜状に設計した。
 市内の高台造成で発生した土砂を順次運搬。東側(浜田川水門側)から、整地・防風柵設置を進めている。基盤整備は31年度末までに終わる見込み。
 苗木は31年度末までに、クロマツとアカマツ合わせて約4万本を植える。耐塩性の強いクロマツを海側に、陸側にアカマツを配置するが、将来的には、以前のような樹種混在型の松林を形成していく。
 県が植栽する約3万本は、住田町下有住の育苗業者などから取り寄せる。使用するのは活着がよく、植栽時期の幅を広げられるコンテナ苗で、マツの枯死を防ぐため松食い虫被害の抵抗性も持たせる。
 残る約1万本は、同市のNPO法人・高田松原を守る会(鈴木善久理事長)を中心とした市民らによる植栽を計画。同会の協力機関の支援のもと山形県酒田市で育てている苗木を活用するほか、高田松原の松ぼっくりから種を採取し育てたゆかりの苗木約600本も植える。
 昨年10月には、試験植栽を実施。県は試験地で肥料や土など条件を変え、適切な生育環境を調査しており、今年秋には幹の太さや樹高など1年間の生育状況をまとめることとしている。
 県沿岸広域振興局大船渡農林振興センターの田屋了森林保全課長は「かつての高田松原に戻す植栽もいよいよ始まる。松原の復旧は市民の願いということを認識し、事業進ちょくに尽力していく」と力を込める。