〝古里の宝〟継承誓う、1個人1団体に光/第42回東海社会文化賞顕彰式(動画、別写真あり)

▲ 地道な活動を続ける石川さん夫妻(手前左側)と松日橋受益者組合に顕彰状を贈呈=大船渡町

石川秀一・春枝夫妻(陸前高田市)と松日橋受益者組合(住田町)

 

 地域社会の各分野で地道な活動を続ける人々をたたえる第42回東海社会文化賞顕彰式(東海新報社・東海社会文化事業基金主催)は4日、大船渡市大船渡町のまるしちザ・プレイスで開かれた。今回は、長年つばき油製造に携わる陸前高田市竹駒町の石川秀一さん(68)、春枝さん(67)夫妻と、古里らしい木橋の風景を守り続ける住田町下有住の松日橋受益者組合(金野純一代表、18世帯)に、顕彰状が贈られた。受賞者は喜びに浸るとともに、さらなる継承に向けた精進を誓った。

 石川さん夫妻は、気仙地域で古くから使われてきたつばき油の製造を継承。平成23年3月11日の東日本大震災では、陸前高田市気仙町に構えていた自宅と「石川製油」が被災した。悲しみに向き合いながらも、翌年から矢作町の就労支援事業所・青松館せせらぎで搾油と製造技術指導にあたり、気仙が誇る産業文化の灯をともし続ける。
 松日橋受益者組合は気仙川に架かり、下有住の中山、松日両地域を結ぶ木橋の維持・管理にあたってきた。増水時は流れに逆らわず、橋脚が倒れる「流れ橋」の構造。倒れるたびに、住民らが修復する。両岸間の移動や住民の絆をつなぐだけでなく、今では古里らしさを感じさせる光景として、多くの人々を引きつける。
 顕彰式には受賞者をはじめ、来賓ら約50人が出席。基金代表の鈴木英彦東海新報社社長は文化賞創設の経緯や石川さん夫妻、松日橋受益者組合の功績を紹介し「今後も気仙のために、陰になり日向になってお力添えを」と期待を込めた。
 来賓を代表し、伊東孝陸前高田商工会長は「後世のために気仙の宝を守り抜く人たち」と祝辞。長年にわたる地道な努力をたたえ「これからも健康にご留意し、ご活躍を」と述べた。
 謝辞に立った秀一さんは、父・正雄さんが昭和30年に菜種油とつばき油の〝二刀流〟で操業した当時を述懐。需要減や都市計画に伴う工場移転、後継ぎの長男・政英さん(当時37)が震災で犠牲となる苦難も振り返った。そのうえで「今は青松館の皆さんと仲良く取り組み、農業で頑張る同級生にも刺激を受けながら、もうひと踏ん張りしてみようと今に至っている。今後ともご協力を」と語った。
 一方、金野代表(72)は「表彰は、夢にも思わなかった。地域のつながりのためにどうしても必要な橋だから、流されれば架け直すことを続けてきただけ。松日と中山両地域をつなぐ里道の延長でやっている」とあいさつ。橋の修復作業は近年、地域住民が一堂に集まる貴重な機会になっている現状にもふれ「これからもずっと、若い人たちに手伝ってもらいながら続けていきたい」と述べた。
 引き続き、大船渡ロータリークラブの上野貴久会長の発声で乾杯。東海新報社のバンド・スクラッパーズによる祝福の演奏では、急きょ秀一さんが加わり、春枝さんへの感謝を込めながらフランク・シナトラの「マイ・ウェイ」を歌い上げる一幕もあった。
 最後は陸前高田ライオンズクラブの佐々木晃前会長による音頭で万歳三唱。受賞者と文化基金の発展、関係者の健勝を祈念した。
 東海社会文化賞は、東海新報社創立15周年を記念して昭和48年に創設。気仙で名利を求めず社会に貢献した陰徳の個人・団体を顕彰している。東日本大震災を受けて平成24、25の両年は実施を見合わせたが、26年に再開。今回で受賞者数は71個人44団体となった。
 顕彰式出席者次の通り。(東海社会文化事業基金関係者除く、敬称略)
 【受賞者】
 ▽石川さん夫妻=石川秀一、石川春枝、中村浩行(大洋学園園長)菊池司(JAおおふなと代表理事専務)佐藤信一(たかたのゆめブランド化研究会会長)村上隆一郎(叔父)石川正博(弟)後藤淳(娘婿)後藤さゆり(娘)後藤叶翔(孫)
 ▽松日橋受益者組合=金野純一(代表)吉田敬一(会計)菊池保(組合員)大苗新太郎(同)金野七郎(同)金野正三(同)紺野力(同)高木サキ子(高木清司前代表の妻)
 【来賓】
 齊藤俊明(大船渡商工会議所会頭)伊東孝(陸前高田商工会会長)千田明夫(住田町商工会会長)上野貴久(大船渡ロータリークラブ会長)藤原太伸(大船渡西ロータリークラブ会長)甘竹信吾(大船渡ライオンズクラブ会長)今野善信(大船渡五葉ライオンズクラブ会長)鈴木正子(国際ソロプチミスト大船渡会長)柴田見(陸前高田ロータリークラブ幹事)佐々木晃(陸前高田ライオンズクラブ前会長)橋本勝美(住田ライオンズクラブ会長)