人々が集い絆生んだ場、理容室ニュー清水の本設移転前に画家ら訪問/大船渡(別写真あり)

▲ 本設店舗への移転を前に、仮設店舗で再会したミヤザキさん(右から2人目)と清水代表(同4人目)=理容室ニュー清水

 東日本大震災後、大船渡市大船渡町字台地内の仮設店舗で営業をしてきた「理容室ニュー清水」(清水康雄代表)。仮設での営業を12日(日)で終え、3月には同町字永沢地内に整備した本設店舗へ移る。仮設の外壁などには、千葉県在住の画家・ミヤザキケンスケさん(38)らが色鮮やかなイラストをペイントし、多くの人々が集い、絆を生む場となった。4日にはミヤザキさんらゆかりある人々が訪ね、仮設店舗との別れを惜しみながらも、今後も絆を深めていこうと誓い合った。

 

ペイント仮設店舗に感謝

 

 震災前、同町字台地内の県道沿いにあったニュー清水。大津波で店舗と清水代表(69)の自宅が被災したが、「真っ暗なまちに自分の力で明かりをともしたい」と、発生から約1カ月半後の4月26日、台地内の高台にプレハブの仮設店舗を設け、営業を再開した。
 その後、被災地で支援活動に携わるミヤザキさんと清水代表が知り合い、店舗の外壁や屋根にペイントを施すことに。
 作業には、当時気仙両市でボランティア活動をしていたオール・ハンズの外国人メンバーらも参加するなど、多くの協力が寄せられた。
 イラストのテーマは、「ハンド・イン・ハンド(手に手を取って)」。空を飛ぶフェニックスから贈られたプレゼントを人々が渡し合う姿、満開の花々などが明るい色調で描かれた。
 仮設店舗はがれきが残る地域の中で、元気と復興へ向けた思いを発信。ミヤザキさんは定期的に足を運んではペイントの修繕や加筆に取り組み、店には散髪客だけではなく、さまざまな縁でつないだ国内外の人々が集い、憩う場所となった。
 震災から間もなく6年。この間、周辺地域はかさ上げされ、本設の商業施設や住居などが建ち、海岸には防潮堤が整備されてきた。
 ニュー清水でも次の一歩を踏み出し、永沢地内の高台に本設店舗を建設。3月3日(金)のオープンが決まり、今月12日で仮設店舗を閉めることとなった。
 これを聞き、ミヤザキさんは約2年ぶりに大船渡を訪問。清水代表はもちろん、これまでペイント作業などに協力してきたゆかりある人々と再会し、多くの出会いをもたらしてくれた仮設店舗に感謝した。
 ミヤザキさんは「この建物の最後に合いたかった。ほかの被災地でもいろいろなことをやっていたが、ここには修復の名目で通い、人々とつながってきた。こんなに何回も塗り直した場所はなく、一つの壁画にここまで携わったことはない。それだけ思いは強い」と、この6年を振り返る。
 清水代表は「ここには多くの人が集まる力があり、止まり木のようになってきたし、6年の歩み、歴史が色濃く残っている。〝ハンド・イン・ハンド〟、これがすべて。人とのつながり、絆はこれからも続いていく。高台にあって海が見える新店舗で、地域に根ざせるよう頑張りたい」と力を込める。
 仮設店舗は解体する方向で検討中だが、「復興過程のシンボルとして残したい」と、譲ってほしいという話もあるという。
 清水代表もミヤザキさんも、「どんな形でも残るようになれば」と話している。