〝希望〟歌い継いで、合唱曲『未来への翼』広がる/陸前高田

▲ 陸前高田市の青年芸能祭で一中生とともに『未来への翼』を披露した、まっとさん㊨shihoさん㊧雪音さん(左から2人目)

 陸前高田市と大阪府在住のミュージシャン3人が、合唱曲『未来への翼』を共同制作し、音源などを無償で頒布している。陸前高田や名古屋の中学生らの間でも歌われるようになり、「曲を通して東北と他の地域、人々をつなげていきたい」というアーティストたちの思いが、少しずつ大きな輪となって広がっている。

 

3人のミュージシャンが共同制作

 

 『未来への翼』は、陸前高田を中心に活動するシンガー・ソングライターのまっとさん(30)と、歌手の雪音さん(32)、同市の小学校へCDの売り上げを寄付するなどしてきた、大阪のミュージックアクティビスト・shihoさん(30)の共作。
 震災後の音楽イベントをきっかけに結び付いた3人が「音楽に携わる者としてできることはないか」と模索する中で、合唱曲制作というアイデアが生まれた。
 曲に込められるのは「歌を通じてずっと東北とつながっていてほしい。子どもたちの未来が輝かしいものであってほしい」という願い。雪音さんが歌詞の原案を練り、3人で内容を推敲した。作曲・編曲はshihoさんが担当し、平成27年に混声3部合唱として完成した。
 「同じ苦しみ乗り越えたから強くなれた」「失った笑顔の分まで見失わず生きていこう」「その手のぬくもりに支えられてここにいるよ」──読む人が読めば、震災について歌われていることが分かる。
 一方で、普遍的な力強いメッセージがあり、誰が歌ってもそこに希望を見いだせる内容になっている。
 この曲は同市と名古屋市の中学生による「絆交流」のテーマソングにもなり、双方の生徒が対面した際などに歌われている。名古屋の子どもたちは、陸前高田を訪れる前からこの歌を合唱していたが、実際に現地へ来たあとで「歌詞の意味がようやくわかり、心にしみた」といった感想を寄せているという。
 メンバーはそれぞれのライブで同曲を歌唱したり、中学校で合唱指導するなどしてきたが、今月、市コミュニティホールで開催された青年芸能祭のステージで、高田一中の有志生徒とともに歌声を披露。一般向けにお披露目されたのはこの日が初となった。
 詞の冒頭、「やっと動き始めた小さな一歩」という言葉は、震災から4年が経過したころ、ようやく自分の内側から出てきたという雪音さん。「今は何もないけれど、子どもたちへ『〝まだ見ぬ未来を変えていく力〟がみんなにはあり、未来はとっても輝かしいんだよ』ということを伝えたい」といい、3人はこの歌がさらにいろんな場所で歌われるようにと強く願う。
 この『未来への翼』プロジェクトでは、希望する学校や市民サークル、団体等があれば、音源や楽譜などを提供。歌の指導を行ったり、コンクールやイベントの際のゲスト出演にも応じる。また、それぞれの経験を生かした講演要請も受け付けている。
 楽曲の音源、楽譜等に関しては、shihoさんのホームページ(https://www.activist-shiho.com/)の問い合わせフォーム、または雪音さんまでメール(yukine.0622@gmail.com)で連絡を。