歴史・文化の相互理解を、陸前高田市立博物館が 名古屋市博と友好提携

▲ 提携書へのサイン後、手を重ね合わせる(左から)本多館長、山田教育長、杉﨑教育長、伊藤館長=名古屋市博物館で(同市博物館提供)

 陸前高田市立博物館(本多文人館長)と名古屋市博物館(伊藤彰館長)はこのほど、文化財の保存技術や学術研究成果の交流、人材の育成・交流を通し、両館の事業を発展させるための友好提携を結んだ。陸前高田市と名古屋市は、市同士、教育委員会同士でも協定を締結している。今回新たに結ばれた博物館同士のつながりが、歴史・文化に対する両市民の相互理解をさらに深めるとともに、陸前高田市立博物館再建の後押しになるものと期待が寄せられる。

 

 技術・研究・人材の交流目的に

 

 陸前高田市立博物館と名古屋市博物館の交流は、昨年の2月から3月にかけて名古屋市博物館で開かれた展示会「陸前高田のたからもの」がきっかけ。被災し修復された陸前高田の文化財を展示する催しで、これを契機に友好提携に向けた調整が進められ、1年を経て実現した。
 友好提携にかかわる調印式は、愛知県名古屋市にある同市博物館で行われ、両市の教育長や両館の館長ら関係者が出席。冒頭、名古屋市の杉﨑正美教育長と陸前高田市の山田市雄教育長があいさつし、これまでのいきさつや今後の協力関係について述べた。
 続いて、両教育長が提携書へサイン。固く握手を交わして〝友好館〟となったことを確認したあと、提携記念ロビー展示「陸前高田市立博物館との交流」も観覧した。
 4月2日(日)まで実施中の展示内容は、両館の絆を示す調印書、両市の交流についての映像「未来の翼」、陸前高田市の中学生が作成した陸前高田紹介パネルなど。被災したツチクジラ標本のFRPコーティング片、陸前高田市の小学生から同市立博物館へのメッセージなども見ることができる。
 陸前高田市立博物館の本多館長は、「両市の相互理解を深めるための大前提は、お互いの歴史・文化を知ること。博物館はその拠点であり、これからは具体的にやれることから取り組んでいきたい」と意欲。名古屋市博物館は「前提として博物館同士の交流を進めながら、協力して両市の歴史・文化を市民に伝えていければ」とのコメントを寄せた。
 今後は、▽両館の学芸員らによる講演会などを通して、双方の歴史・文化を両市民に伝えていく▽陸前高田市立博物館で行われている被災文化財の修復作業から得られた知見を共有することで、両地域の文化財を守っていく取り組みに生かす▽陸前高田市立博物館の再建に向けて、情報交換を行い、魅力的な博物館となることを目指す──などを念頭に連携が行われる。