一般会計は767億円に、ふるさと納税で新事業も/陸前高田市29年度予算案

 陸前高田市は21日、平成29年度の各種会計当初予算案を発表した。一般会計は767億4800万円で、現年度当初予算を77億9100万円(11・3%)上回った。土地区画整理や道路整備など、震災復興計画に基づく事業の進展が大きな要因。また、子どもや高齢者、障害者支援、産業支援といった6分野16の事業については、「ふるさと納税」の約9500万円を充当する。各種予算案は22日に開会する市議会定例会に提出される。

 170222-1%e9%9d%a2%e3%80%80%e4%bc%9a%e8%a8%88%e4%ba%88%e7%ae%9729年度の予算編成にあたって市は、厳しい財政状況をふまえ、事業効果・効率性の観点から既存の事業の見直しなども実施。「復興事業の推進」と「市民サービスの維持確保」を柱とした。
 震災復興計画に基づく事業は、123事業で計532億2565万円。このうち高田地区土地区画整理事業費は、現年度当初比約18億円増の148億2797万円。都市計画街路整備は64億6893万円で、同61億3000万円増。
 これは、区画整理事業で整備される土地の大部分が29年度中に引き渡される予定で、舗装や側溝・下水管の設置といった「2次造成工事」が増加見込みであるため。
 さらに、かさ上げ工事や切土工事が進ちょくしたことから、都市計画道路の整備が進められるなど、復興事業が一部で〝仕上げ段階〟へ移りつつあることを示している。
 また、災害復旧事業費は4事業で計3億9149万円。漁港施設の災害復旧などにある程度のめどが立ったことにより、現年度当初と比べるとおよそ88億円減少する。
 一般会計と下水道事業、後期高齢者医療など八つの特別会計の合計額は838億8680万円で、現年度当初比では2・6%減。一般会計が9割を占める。
 一般会計の主な歳入をみると、全体の46・2%を占め最も大きいのが繰入金で、東日本大震災復興交付金などを含む354億8270万円。次いで地方交付税176億7323万円(構成比23%)、国庫支出金126億7404万円(同16・5%)と続く。
 市税収入は17億259万円を見込み、現年度当初比では2・1%の減。市民法人税の減少によるものといい、被災から再建した商工業者など、事業者による設備投資などが背景にあるとみられる。
 歳出のうち最も多いのは、区画整理事業の実施などに伴う土木費。469億4230万円と全体の61・2%を占め、現年度当初からの伸び率も37・0%と最も大きい。
 伸び率が20・1%となる総務費は、復興交付金と新庁舎整備分など96億9157円を計上した。このうち新庁舎整備事業費は12億7052万円で、市は「現在提示されている庁舎候補地、どの案に決まった場合にも対応できるものとして示した」と説明した。
 減額が目立つのは、労働費の2044万円(現年度当初比83・1%減)、災害復旧費の64億649万円(同50・9%減)。
 復旧・復興関連とは別の「その他事業(通常分)」は389事業で、計161億8901万円を計上する。このうち、「まち・ひと・しごと総合戦略」関連は13事業で計6億6070万円となり、現年度当初の4047万円から大幅に増えた。
 「まち・ひと・しごと総合戦略」関連では、▽地域ブランド化推進事業費2601万円▽陸前高田思民推進事業費378万円▽子育て応援事業費766万円▽果樹産地化推進事業費2000万円▽イシカゲガイ生産体制強化支援事業2657万円──の新規事業5件が、いずれも「ふるさと納税」からの充当となる。
 ふるさと納税充当事業は計16件で総額9593万円。このほか、移住・定住促進やコミュニティー活動・NPO団体等の支援などに使われる。
 運転免許を持たない高齢者等へのタクシー利用券を配布する「ふるさとタクシー助成事業費」としては、1400万円を計上。矢作や横田、広田など、中心地から遠いエリアでの試験的な実施を見込んでいるという。
 戸羽太市長は「ふるさと納税の納税者は、『こういうふうに使ってほしい』と目的を持って寄付してくださっている。そうした思いをくんで具体的に事業を組んだのは、今回が初めてのことと思う」として、多彩な新規事業に取り組めた背景を説明し、これらの予算を今回の〝目玉〟の一つとした。
 特別会計をみると、下水道事業7億3734万円、農業集落排水6683万円、漁業集落排水1億5636万円、国民健康保険事業勘定29億4584万円、同診療施設勘定2億3994万円、後期高齢者医療2億1700万円、介護保険事業勘定27億4591万円、同介護サービス事業勘定1082万円。企業会計の水道事業のうち収益的収支、資本的収支の収入合計額は19億4707万円となっている。
 一般会計の市債残高は29年度末で130億1205万円となり、28年度末から2億101万円余り減る見込み。住民一人あたりの残高は65万6000円となる。