ユネスコ無形文化遺産登録に向けて再提案へ、吉浜のスネカなど来訪神行事

▲ ユネスコ無形文化遺産登録を目指し、各地の来訪神行事とともに再提出される吉浜のスネカ(写真は今年1月)

 国の文化審査会は22日、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産登録に向けた審査が先送りとなっている「来訪神:仮面・仮装の神々」に関し、平成30年の審査案件として再提案することを決めた。再提案では、大船渡市三陸町吉浜のスネカなど8件に、鹿児島県鹿児島郡に伝わる2件を追加し、より内容を充実。来月末に改めてユネスコ事務局へ提案し、30年11月ごろにユネスコ政府間委員会で審議が行われる見通しとなっている。

 

 「来訪神:仮面・仮装の神々」は、仮面・仮装の異形の姿をした者が「来訪神」として、年の初めや季節の変わり目などに家々を訪れ、子どもや怠け者を戒めたり、人々に幸や福をもたらしたりする行事。
 国は、国指定重要無形民俗文化財である、吉浜のスネカ、甑島(こしきじま)のトシドン(鹿児島県薩摩川内市、21年無形文化遺産登録)、男鹿のナマハゲ(秋田県男鹿市、23年無形文化遺産「情報照会」)、能登のアマメハギ(石川県輪島市、能登町)、宮古島のパーントゥ(沖縄県宮古島市)、遊佐の小正月行事(山形県遊佐町)、米川の水かぶり(宮城県登米市)、見島のカセドリ(佐賀県佐賀市)の8件を対象に、昨年3月ユネスコ事務局へ提案していた。
 29年秋ごろには、ユネスコ政府間委員会で登録にかかる審査が行われる予定だった。しかし、昨年6月、世界各国からの提案件数が上限の50件を超えたため、審査は1年繰り延べとなった。
 その後、今年に入って国は新たに、来訪神行事である薩摩硫黄島のメンドン(鹿児島県三島村)と、悪石島のボゼ(同十島村)を国指定重要無形民俗文化財に指定。今回、この2件を加えた10件の来訪神行事を、ユネスコ事務局側へ再提出することに決めた。
 文化庁が公表した今後のスケジュールによると、来月に無形文化遺産保護条約関係省庁連絡会議で審議がなされたあと、同月末にはユネスコ事務局に提案書を提出。30年10月ごろに評価機関による事前審査の勧告、同11月ごろには政府間委員会での審議を予定する。
 吉浜のスネカは、180年以上前から伝わる小正月の伝統行事。鬼とも獣ともつかない恐ろしい形相の面をかぶり、家々に押し入っては怠け者を戒めるもので、豊漁と五穀豊穣の祈りも込められる。
 吉浜スネカ保存会が伝承活動の中心を担っており、地元の中学生も参加。平成16年に国重要無形民俗文化財の指定を受けた。
 戸田公明市長は「ユネスコ無形文化遺産代表一覧表へ改めて提案することが決定され、大変喜ばしく思う。地域の方々が大切に守り伝えてきた伝統行事が無形文化遺産に登録され、その背景にある風土の魅力と人々の心が世界へと伝えられることは、市にとっても意義深いこと。来訪神行事の伝統を担う全国の皆さまとともに、登録の実現を願っている」と期待を込めている。