古式ゆかしく祝福、「昔ながらの手づくり結婚式」/住田町

▲ まち家世田米駅前で祝福を受ける新郎新婦=住田町

 住田町内で25日、伝統的な慶事の風習を再現する「昔ながらの手づくり結婚式」が行われた。黒紋付きと振り袖姿の新郎新婦が各地を練り歩き、多くの住民から祝福を受けた。
 町内ではかつて、花嫁道中や新郎宅での「三三九度(さんさんくど)」などが行われきたが、近年は見られなくなった。平成26、27年度は、下有住地区で行われてきた「アリスの不思議な文化祭」の一環行事として挙行。本年度は町から助成を受けて独立開催の形をとり、同結婚式実行委員会(大村恵世会長)が主催した。
 祝福を受けたのは、現在、栃木県高根沢町に暮らす松田知洋さん(26)と恵美さん(25)夫妻。知洋さんは上有住出身で、恵美さん=旧姓・福田=とは宇都宮大学在籍時代に知り合った。
 一昨年入籍したが、披露宴などは行っていなかったという。知洋さんの地元で、住田にゆかりがある新郎新婦を募集していると聞き、参加を決めた。
 今回は、上有住にある知洋さんの実家を「福田家」として、下有住地区公民館を「松田家」として挙行。上有住の両向地区では新婦を仲人に預ける盃事が行われたほか、地域住民の祝福を受けながら「送り酒」が行われた。
 世田米のまち家世田米駅では「迎え酒」が行われ、古式ゆかしい新郎新婦姿が、古民家を生かした独特のたたずまいに映えた。下有住地区公民館付近での迎え酒は、近隣にある中上仮設住宅在住者をはじめ近隣住民が行列を見守り、祝福ムードを盛り上げた。
 館内では新婦を迎える盃事に続いて結婚式が始まり、新郎新婦が永遠の契りを交わす三三九度の盃事に入った。
 まず、知洋さんが小盃に注がれた御神酒を三口目に飲み、恵美さんも同じ作法を行った。新郎新婦は中盃、大盃でも重ね、上有住の天嶽謡同好会が祝事に合わせた謡を響かせる中、夫婦の誓いを新たにした。
 乾杯後は「さんさ時雨」「外舘甚句」による祝いの舞が繰り広げられた。会場には、数カ月前から実行委メンバーが各地で聞き取りをするなど準備を重ねた手づくりの膳料理が並んだほか、裏方役の住民もかっぽう着姿で参加するなど、古き良き雰囲気に包まれた。
 知洋さんと恵美さんは「地域の皆さんにも多く来ていただき、たくさんの祝福を受けた」と語り、ともに笑顔を見せた。大村会長(38)は「地域の結束力の強さを改めて感じた。準備を重ねる中で、地域の伝統を確認する機会にもなった」と話していた。