世界の情勢、明快に解説、立教大主催で池上さん講演会/陸前高田グローバルキャンパス開設記念(別写真あり)
平成29年2月26日付 7面

立教大学陸前高田サテライトおよび陸前高田グローバルキャンパス開設記念公開講演会は25日、同市高田町の市コミュニティホールで開かれた。ジャーナリストの池上彰さんが「グローバル社会を生きる」と題し講演。国際情勢を分かりやすく解説しながら、個々が多面的・長期的な視野を持つ大切さを訴えた。
立教大と岩手大が4月25日(火)、旧高田東中校舎に交流拠点「陸前高田グローバルキャンパス」を開設するのに先立ち、同キャンパスを大学の「サテライト」にも位置付ける立教大が主催した講演会。同大で客員教授を務め、「国際情勢を読み解く」をテーマに講義する池上さんの〝出前授業〟として企画された。
テレビのニュース解説等でも人気のジャーナリストの話を聞きたいと、観覧には申し込みが殺到。この日は抽選に当たった市民らおよそ240人と、気仙管内の高校生100人が聴講した。
池上さんは、北朝鮮が内包する問題や、〝トランプ旋風〟が吹き荒れたアメリカの情勢について、身近なエピソードから分析。現在の為政者の人となりがどのようにつくられていったのか、その背景にあるものをひもときながら、多彩に話題を発展させ、複雑に見える国際関係も明快に解説した。
そのうえで「『変な人だよね』『変な国だよね』で済ませるのではなく、なぜこういった人物が生まれるのか、冷静に論理的に、学問的に分析できる力を身に付けることが大切」と呼びかけた。
さらに、世界のグローバル化が進むと保守主義が高まり、「自分たちさえ良ければいい」というポピュリズムがまん延することにも言及。「グローバルに偏るのでも、排他的になるのでもなく、『グローバリズムを取り入れながら、自国もよくしていく』という第3の道があるはず。自分たちに何ができるのか、常に考えていってほしい」と述べた。

講演後は会場から盛んに質問が飛んだ=陸前高田
続く質疑応答のコーナーでは、高校生たちが積極的に挙手。「国が自分のことしか考えないとどうなってしまうのか」という問いには、「不況になると、自国の産業を守るために保護貿易を行い、外国のものに高い関税をかけることがある。短期的に見ればそれでもいいが、相手も報復関税をかけることで貿易が滞り、ますます双方の経済に打撃を与える。近視眼的な見方ばかりしていると、長期的にはまずいことになる」などと、歴史上の具体的な例を挙げながら説明。
「18歳になり選挙権を持ったが、政治にどうかかわっていけばいいのか」という質問には「若い人が投票に行けば、政治家は若い人の意見を無視できなくなる。まずは政治に絶望したり、無関心になったりしないこと。選挙権を行使することはとても重要」と説いた。
講演終了後は立教大の西田邦昭副総長が、陸前高田グローバルキャンパスについて紹介。開設によって若い人たちが多数同市を訪れることになる点や、「これまでてんでんばらばらに動いていた多くの大学が、やっと点でつながり、面としての活動ができるようになる。われわれに『こんなことをやってほしい』と、どんどん要望してもらえれば」と呼びかけた。