「小さな拠点」から誇りを、多田町長が施政方針演述/住田町議会3月定例会

▲ 自身最後となる施政方針演述に臨んだ多田町長㊨=住田町

一般質問もスタート

 

 住田町議会3月定例会は2日、開会した。会期を13日(月)までの12日間と決め、多田欣一町長の施政方針演述や3議員による一般質問などが行われた。演述で多田町長は、総合戦略に盛り込んだ施策推進や地区公民館を中心とする小さな拠点づくりへの支援などを挙げ、住民が誇りをもって豊かな生活を送るために「小さい町だからできること」などの実現を目指すと強調。一般質問は3日も午前10時から行われ、5議員が登壇する。

 今期限りでの勇退をすでに表明しており、自身最後となる16度目の演述に臨んだ多田町長。冒頭、今年1月に安倍晋三首相が施政方針演説の中で地方創生に挑む地方を積極的に応援する姿勢を盛り込んだことにふれながら、町がまとめた「人口ビジョン・総合戦略・総合計画」の推進を掲げた。
 地域づくりでは、集落支援員や地域おこし協力隊員による人的支援策、新規で地域予算制度を導入する財政的支援に言及。協力隊員は、4月に5地区すべてでの配置が整う。地区公民館を中心とする「小さな拠点づくり」を通じた地域振興支援に力を込めた。
 災害に強いまちづくりに向けては、昨年の台風10号の教訓をふまえ、要配慮者の避難支援体制整備や大船渡消防署住田分署の移転新築、河川監視カメラの増設などを展開。東日本大震災支援として、引き続き木造仮設住宅などで被災者の生活再建を支える。
 教育関連施策では、栗木鉄山跡の国指定史跡を見据えて発掘調査などに着手。世田米など伝統的なまち並みの保護・活用も図る。
 林業施策では、林地の集約化による施業の効率化を推進。長期的な視点に立った森林整備、木材生産の促進を図るとともに、新技術として注目されるCLT(直交集成板)なども、関係機関・団体と連携・協調しながら展開する。
 移住促進・定住促進では、空き家活用の具体的なモデルづくりも計画。観光産業充実に向け、町内で活動する関連事業者の組織化を図るほか、自然や文化資源を生かすルート設定にも力を入れる。
 多田町長は演述の最後に、小さな拠点づくりに再びふれ「そこに住む人々が誇りを持って豊かに生活していくため、自分の地域は自分でつくるという『小さなまちでなければできないこと。小さな町だからできること』の実現を目指す」と強調。5カ月余となった残り任期を全力で取り組む姿勢も掲げた。
 多田茂教育委員長の教育行政演述後は一般質問に入り、村上薫、菅野浩正、瀧本正德(いずれも無所属)各議員が登壇。1月に県が気仙川の治水対策で世田米の昭和橋を当初計画よりも前倒しして架け替える方針を示した動きは、村上、菅野両議員が取り上げた。
 村上議員は工程計画を質し、多田町長は調査設計着手から完成までは6~8年を要するとし、整備完了は平成34~36年との見通しを説明。架け替えのあり方は、防災、救急面に加え、蔵並みとの景観調和などを挙げ「さまざまな観点から検討したい」と述べた。
 熊谷公男建設課長は「町独自での議論ではなく、県と一体的になって進めたい」と答弁。「住民に選択肢を示すべき」との再質問には▽機能維持▽車両のすれ違いができる幅員とし、歩道も確保▽別ルートで新設──などが検討対象となる見方を示した。
 昭和橋近隣に新分署が整備される中、佐藤英司総務課長は「現在の幅員(3・2㍍)でも、ポンプ車、救急車の通行は確保できる」と回答。橋を木造で整備する提案について多田町長は「既存概念にとらわれず、気仙川や街並みのイメージアップを考える中で、木造によるアイデアがあってもいい。今後住民議論を深めたい」と語った。
 菅野議員は、すれ違いが可能で歩道も確保する「グレードアップ」を選択した場合の整備費負担を追及。1月下旬に開かれた住民向けの意見交換会で県側は、機能維持の架け替え費用は県が負担し、拡幅をするならば町負担が必要との認識を示した。
 機能維持の事業費概算は約4億7000万円。多田町長は「県と同額程度の負担をしなければいけないと考えている」と答えた。
 瀧本議員は、多田町政16年の総仕上げを迎え「諸施策を加速させるべき」との視点で町政課題を質問。早期経営再建や、町に対して計画通りの融資償還が急がれる三陸木材高次加工協同組合・協同組合さんりくランバー問題に対しては「融資返済や立木未収金問題解決の道筋、めどを示すべき」と迫った。
 多田町長は両事業体に「催促状」を出したと答弁。代表理事の死去などがあり、回答はまだないという。今月中には今後の対応について、議員と意見調整の場を持ちたい意向も明かした。