〝漁業者の甲子園〟で最高賞、綾里漁協が農水大臣賞/全国青年・女性漁業者交流大会

▲ 綾里漁協青壮年部(右から2番目)が県勢13年ぶりとなる最高賞を受賞=東京都(写真提供・綾里漁協青壮年部)

 〝漁業者の甲子園〟といわれる第22回全国青年・女性漁業者交流大会はこのほど、東京都内で開かれ、綾里漁業協同組合(佐々木靖男代表理事組合長)青壮年部が最高賞の農林水産大臣賞を受賞した。県勢の最高賞は13年ぶりで、関係者は喜びに包まれている。

 大会は、日ごろの研究・実践の成果を発表し、参加者間の交流によって知識・情報を深化させることで水産業や漁村の発展と活性化を目指すもの。各都道府県で行われる実績発表報告会で優勝した漁協などが▽資源管理・増殖▽漁業経営改善▽流通・消費拡大▽地域活性化▽多面的機能・環境保全――の5分科会に分かれ、取り組みの成果を発表した。
 地域活性化分科会に参加した綾里漁協青壮年部のテーマは「つくる人と食べる人の新しい関係」で、佐々木淳さん(46)が発表した。
 同漁協では、平成15年から消費者へのワカメやホタテの直送を行っており、16年に「早採りわかめ磯一番」を、20年に「恋し浜」を商標登録した。直送販売は全国に口コミで広がり、震災直前には販売開始直後の約10倍の売り上げを記録。消費者との信頼関係も少しずつ構築されていった。
 東日本大震災後、国内外からボランティアが訪れたが「ホタテやワカメで綾里を知っていたから来た」という人もおり、「ボランティアの正体は、信頼関係を築いていた消費者たちだった」と気づかされたという。その輪の中にいたダイバーたちは、NPO法人三陸ボランティアダイバーズを結成し、同漁協とともに海中のがれき撤去に力を尽くした。
 また、同漁協が創刊した「綾里漁協食べる通信」を見て、「もっと漁業を知りたい」という読者が増えたことから、生産者と消費者の交流スペースである「恋し浜ホタテデッキ」が作られた。ホタテデッキを会場にした「浜の学び舎」セミナーでは、綾里や漁業の魅力を伝えており、好評を博しているという。
 さらに、食べる通信の読者たちによる同漁協のファンクラブが組織され、海産物を買ってはイベントや店舗で販売するケースも出てきているという。そこで得られた利益は、ファンクラブ活動の一環に使われている。
 会員は首都圏を中心に約150人。同漁協の取り組みは、生産者と消費者の信頼関係だけではなく、これを共有するファン同士の関係、ファンが新たに作り出す消費者との関係も紡いだ。
 これらの関係から、消費者から新たな漁業の担い手が現れる可能性もあり、同漁協では「漁業者の減少に少しでも歯止めをかけられたら」と期待を寄せる。
 これらの取り組みが結実したのが、東京オリンピック・パラリンピックの東日本大震災被災地復興支援映像「2020年。東京と東北で会いましょう」。世界各国の旗を掲げた大漁船団が疾走するシーンは、同漁協が全面協力している。
 発表は「このシーンは、震災時に受けた支援に対する感謝の気持ちと、綾里の海の素晴らしさ、漁師の格好良さを伝えるもの。消費者が、生産者の意識を変えてくれた。両者の気持ちを近づけることで、持続可能な漁業と地域活性化につながるのではないか」と締めくくった。
 選考の結果、同漁協には分科会で、最も優れた団体に贈られる農林水産大臣賞に輝いた。
 発表した佐々木さんは「各地で優勝してきただけあって、どの発表も素晴らしかった。受賞の知らせは、同漁協青壮年部とファンとの交流会の途中で聞いた。応援してくれるみなさんと喜びを共有できて本当に良かった」と振り返る。
 また、「漁協のみんなで取った賞。今までの取り組みが間違っていなかったという証拠になると思う」と笑顔。受賞を糧に、漁業者と消費者をつなぐ取り組みに、さらに力を入れていくつもりだ。